研究課題/領域番号 |
15K19406
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
奥村 俊介 旭川医科大学, 医学部, 特任助教 (10516339)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | NUT midline carcinoma |
研究実績の概要 |
①次世代シークエンサーを用いて、Nut midline carcinoma(NMC)細胞株における遺伝子変異の解析を網羅的に行なった。その結果、ある遺伝子Aの異常が共通して見つかり、その機能を解析するべく研究を進めた。変異したその遺伝子Aの機能を評価するため、野生型の及び変異型の遺伝子Aを発現するような細胞株を作成することとした。NMC細胞株へその遺伝子を導入するにあたり、プラスミドベクターを作成した。遺伝子Aは癌抑制遺伝子でもあったため、遺伝子導入により細胞死を呈する可能性もあったため、coumermycinによって遺伝子の発現を調整できるようなプラスミドベクターの作成を行なった。 ②治療標的を探索するべく、次世代シークエンサーを用いてmicro RNA (miRNA)のプロファイリングの評価を行った。その結果、NMC細胞株では、ある特定の環境でmiRNAのプロファイリングが大きく変化することが判明した。そのうち、一番大きな発現の変動が見られたmiRNAを選択し、NMC細胞株におけるそのmiRNAの機能を解析することとした。miRNAのmimic及びinhibitorをそれぞれNMC細胞株に導入したところ、導入された細胞で、細胞増殖に変化が生じることが判明した。このmiRNAはNMCの新たな治療標的であることを初めて見出し、そのメカニズムをさらに検討することとした。 ③FFPE臨床検体を用いて、NMCを効率よく診断できるような研究プロトコールを作成した。スクリーニングとして、digital PCRを用いたNUT遺伝子発現の定量評価を利用することとした。様々な実験条件を試し、適切なプロトコールで臨床検体からNUT遺伝子発現の有無を評価できるシステムを作り上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一連の研究成果として、Nut midline carcinomaにおける新たな治療標的を見出すことに成功した。 複数のスクリーニング法で治療標的を検討した結果、細胞株を用いた基礎実験では、新たな治療標的の探索と、その機能をある程度まで評価することができた。in vitro実験まで概ね計画通りに進んでおり、in vivo実験で検証することで基礎研究データとして十分なものになることが予想される。 臨床検体を用いたNut midline carcinomaの評価については、やや遅れている。当初予定していたIn situ hybridyzation法が上手く機能しなかったため、digital PCRを用いたスクリーニング法に切り替えた。その新たなスクリーニング法は効率的に機能するため、予定している症例数までを目標に、評価を実践している。
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今後の研究の推進方策 |
新たな治療標的の作用機序について、in vitro実験にて、さらなる検証を進める。想定される作用機序が仮説の通りであるのか、複数の研究モデルを用いて検証する。さらに、in vivo実験を用いて新たな治療標的の効果を検証する。マウスを用いた研究を行い、in vitro実験で認められた結果が、in vivo実験で再現されるか、検証を行う。 臨床検体におけるNUT midline carcinomaの評価を進めていく。目標症例数までスクリーニングを行い、陽性となった検体で、次世代シークエンサーを用いて融合遺伝子異常の検索を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床検体の解析において、プロトコールの変更が生じた。新たなプロトコールを検証するため、次年度まで研究が延長されることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
臨床検体の解析費用に主に充てられる。
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