研究実績の概要 |
当年度の目的であったMCSF添加による骨格筋細胞株からのVEGF-C,-D産生が有意にみられなかったため実験計画を変更した。我々の検討からMCSF投与により横隔膜からも有意なVEGF-C,-Dの産生がみられていたため、横隔膜のリンパ管に着目して実験を行った。胸水の貯留には胸膜のリンパ管や血管が関与している。これまでヒトやマウスの胸膜のリンパ管に関して不明な点が多いため、横隔膜上の胸膜を用いて、正常および炎症性疾患として敗血症モデルマウス、悪性疾患としての癌性胸膜炎モデルマウスを作成しリンパ管などの脈管系を解析した。またMCSFを投与することで引き起こされる影響についても検討した。C57/B6マウスの横隔膜全体を採取しリンパ管内皮を抗LYVE-1抗体、血管内皮を抗CD31抗体で免疫染色し、リンパ管の分布の確認とリンパ管・血管密度を測定した。次にマウス大腸菌毒素のlipopolysaccharide(LPS)を腹腔内に投与した敗血症モデル、胸腔内に投与した炎症性胸膜炎モデル、Lewis Lung carcinoma Cellsを胸腔内投与した癌性胸膜炎モデルを作成し横隔膜を解析した。正常横隔膜では幅の広いバンド状のリンパ管がお互い連結し、脊柱周辺の腱中心から放射状に全体に拡がっていた。癌性胸膜炎モデルではリンパ管密度増加・リンパ管径の拡大がみられた。炎症性胸膜炎モデルマウスではリンパ管径の拡大がみられていた。敗血症モデルでは見られなかったがMCSFを追加することでリンパ管径の拡大がみられた。機序として癌や炎症により横隔膜からのVEGF-C,-Dの産生の増加を引き起こし、それがリンパ管の拡大を引き起こすこと、またMSCFは横隔膜からのVEGF-C,-Dの産生を促進することが考えらえた。
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