研究課題
細胞傷害や炎症性細胞集簇により炎症局所ではpHが低下していると考えれる。気管支喘息では好酸球、リンパ球などの炎症性細胞の集簇によって気道のpHは低下していると予測される。実際、喘息患者の呼気凝集液のpHは低下していることが報告されている。一方、OGR1ファミリーは細胞外プロトンを感知するユニークな受容体であり、OGR1,TDAG8,GPR4,G2Aの4つの受容体からなる。そのうち、OGR1は肺を始めとする様々な臓器に発現しているが、その機能は未だ不明な点が多い。我々はOGR1に着目し、欠損マウスを作成し、その機能を解析した。卵白アルブミン(OVA)腹腔内投与、吸入により作成した喘息モデルではOGR1欠損マウスにおいて肺組織における好酸球、リンパ球などの炎症性細胞集簇が抑制され、肺胞洗浄液中のTh2系サイトカインIL-4,IL-13, IL-5の減少を認めた。またメサコリンによる気道抵抗もOGR1欠損マウスで有意に抑制された。さらに、古典的喘息発症メカニズムの鍵となる樹状細胞に着目した。樹状細胞にはOGR1が発現し、OVA投与により、その発現が上昇していた。OGR1欠損マウスでは樹状細胞の遊走に関与するCCR7の発現が減少していた。抗原提示を受けるT細胞におけるOGR1の役割について解析した。欠損、野生型マウスの脾細胞から磁気ビーズを用いてT 細胞を単離した。CD4+T細胞、CD8+T細胞にOGR1ファミリーがmRNAレベルで発現していた。また、CD4+T細胞と樹状細胞との共培養を行い、OVA刺激によるTh2系サイトカインの分泌についても検討した。OGR1欠損マウス樹状細胞とTリンパ球との共培養、OVA刺激ではTh2系サイトカインの抑制が認められた。以上のことから、リンパ球に発現しているOGR1はOVAを抗原とする気管支喘息モデルにおいて炎症促進性に働くを可能性が示唆された。
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