近年、全身の細胞がExosomeと呼ばれる微小膜小胞を放出し、他の細胞に核酸等を伝達することが明らかになった。本研究では、肺線維芽細胞によるExosome、miRNA分泌能を解析した。ln vitroで、HFL-1細胞を炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)の存在下で培養し、上清から超高速遠心分離法によりExosomeを単離した。培養上清中に粒子径100nm以下に分布する粒子を動的光散乱法、ナノ粒子トラッキング解析にて確認した。電子顕微鏡像でもExosomeに相当する円形状粒子を認め、それらがCD63やβアクチン陽性であり、Exosomeに矛盾しない結果を得た。肺線維芽細胞の修復能に関連するmiR-146aのExosome内での発現(Ex-miR146a)をリアルタイムPCR法により測定した。無刺激ではEx-miR146aは極めて低値であったがIL-1β、TNF-αは時間、濃度依存的に増加した。次に、対照およびCOPD患者肺から単離した肺線維芽細胞をin vitroで培養し、培養上清からExosomeを単離した。無刺激状態では、細胞内およびExosome内でのmiR-146aは極めて低値であったがIL-1β、TNF-αはそれらの発現を増加した。COPD肺線維芽細胞は対照に比し細胞内miR-146a、Ex-miR146aが顕著に低下した。IL-1β、TNF-α存在下におけるEx-miR146aは気流閉塞の重症度と負の相関を認めた。以上より、肺線維芽細胞は肺組織修復に関連するmiR146aをExosomeにより細胞外に産生し、炎症性サイトカインにより制御されることが明らかになった。COPD肺線維芽細胞ではその産生量が低下し、気流閉塞が重症な患者程低下している傾向があった。以上により、Ex-miR146aに着目したCOPD治療や診断の基盤となる結果が得られた。
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