研究課題/領域番号 |
15K19414
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野口 智史 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60732807)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺線維症 / TAZ / Hippo pathway |
研究実績の概要 |
本年度はTAZの肺線維症における機能的役割を主に解析した。 まず、特発性肺線維症(IPF)患者の肺におけるTAZの発現を免疫組織染色により評価したところ、fibroblastic fociに局在する肺線維芽細胞でTAZが高発現していた。in vitroではヒト胎児肺線維芽細胞株HFL-1を用いて、siRNAによりTAZをノックダウンすることにより、増殖・収縮・遊走能が抑制されることを示した。RNA-seq及びqRT-PCRでCTGFやcollagen1A2といった遺伝子がTAZにより制御されていることも示した。次にブレオマイシン誘導性肺線維症モデルを作成し、in vivoでの解析を行った。ブレオマイシン投与により生じた肺の炎症/線維化部位における間葉系細胞でTAZが高発現していることが免疫組織染色により示された。さらに遺伝子改変マウスを用いて、Sircolコラーゲン解析法により肺コラーゲン量を定量したところ、野生型と比較し、Tazヘテロマウスでは、ブレオマイシン投与後の肺コラーゲン量が有意に低下していた。Flexiventを用いて肺エラスタンスを評価したところ、野生型と比較し、Tazヘテロマウスでは肺エラスタンスが低下する傾向にあった。これらのことからTAZは肺線維芽細胞の活性化において重要な役割を果たし、肺の線維化に寄与することが示唆された。 また、癌関連線維芽細胞(CAF)におけるTAZの機能解析を行った。HFL-1細胞を用いて、TAZが細胞増殖を促進することが示されたため、さらに細胞周期解析、アポトーシス解析を行ったが、有意な結果が得られなかった。また、細胞上清のサイトカインアレイを行ったが、TAZノックダウン前後で、CAFに特徴的なサイトカインの発現変化は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①遺伝子改変マウスを用いたin vivoの系、②ヒト線維芽細胞株を用いたin vitroの系、③ヒトのIPF組織を用いたin situでの発現解析など、順調に解析でき、TAZの肺線維症における重要な役割が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
肺線維芽細胞の増殖・遊走・収縮におけるTAZの機能的役割がある程度分かったが、次にRNA-seqやChIP-seqなどによりその分子学的機序を解明する。さらに肺線維症、肺癌両者において重要な役割を果たすTGF-b/Smadシグナルとの関連も同様に評価したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた計画通りに実験が遂行されたが、消耗品購入で業者からの割引があったため、わずかに残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画にそって必要な消耗品等の調達に使用する。
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