研究課題/領域番号 |
15K19415
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
古澤 春彦 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (40632154)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性過敏性肺炎 / 鳥関連過敏性肺炎 / 間質性肺炎 / 質量分析 / IGLL |
研究実績の概要 |
過敏性肺炎は吸入抗原によるアレルギー性疾患であり、慢性過敏性肺炎は特発性肺線維症(IPF)と類似した臨床経過をとる予後不良な疾患である。慢性過敏性肺炎の原因として最も多いのは鳥糞や羽毛が原因となる鳥関連過敏性肺炎であるが、抗原となるエピトープは未だ同定されていない。今回我々は、鳥関連過敏性肺炎の原因抗原をハト組織と患者検体でwestern blotを行い質量分析により解析することで抗原となるタンパクを同定することとした。 ハト血漿とハト糞抽出物の2次元電気泳動を行い、鳥関連過敏性肺炎患者と対照者(他の過敏性肺炎、特発性肺線維症、健常者)の血清を用いてwestern blotを行ったところ、鳥関連過敏性肺炎患者に特異的に反応するバンドを検出した。そのバンドを質量分析により解析した結果、Immunoglobulin lambda-like polypeptide(IGLL)と同定した。次に6Xヒスチジンタグと融合させたIGLLのベクターを合成し、大腸菌に遺伝子導入、発現を誘導したのちNi-NTAアガロースにて精製した。得られたIGLLのリコンビナントタンパクを用いて、患者と対照者の血清を用いてELISAを行ったところ、鳥関連過敏性肺炎患者で有意に高い反応性が認められた。 次に、IGLLの細胞性免疫に与える影響を確認するため、患者と対照者の末梢血単核球(PBMC)にIGLLを添加し、リンパ球刺激試験(LST)と培養上清中のサイトカインの測定を開始したと。LSTは慢性過敏性肺炎患者17例と対照で比較し、患者群で有意に高い反応を認めた。また、マルチプレックスサイトカインアッセイを行ったところ、患者群においてTNF-αの上昇とIL-10の低下が認められた。これらの検討によって得られた知見は英語論文として報告した(Respir Res. 2017;18:65-73)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度目標としていた慢性鳥関連過敏性肺炎患者におけるIGLLの特異的な免疫反応はPBMC/血清いずれにおいても確認できた。特にTh1反応が亢進・Th2反応が減弱することは過敏性肺炎の慢性化プロセスにおいて重要な所見であり、有意義な検討がなされたと考えている。 一方、28年度IGLLのモノクローナル抗体の作製と動物モデルの確立についても検討していたが、論文の投稿・追加実験に難渋し、十分な検討が行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
まずIGLLのモノクローナル抗体の作成を進めていく。モノクローナル抗体が確立されることで、患者肺検体中のIGLLの局在を確認でき、慢性鳥関連過敏性肺炎の病態を解明する一助となることを期待している。患者の自宅や環境中の抗原量を測定し、臨床的に抗原回避の効果確認に役立てることも予定している。 また、IGLLを用いた動物モデルの確立も検討している。過去に我々は慢性過敏性肺炎モデルマウスを作成しているが、精製されたタンパクでのモデルマウスは確立できていない。よりヒトに近い機序で動物モデルが作製できれば、病態の解明に大きく寄与すると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は論文の執筆・追加実験に時間がかかり研究の進捗が停滞した。また、モノクローナル抗体の作成に難渋し、期待された結果が得られなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度も引き続きIGLLのモノクローナル抗体の作製を予定している。また、得られた抗体を用いて患者肺検体中のIGLLの局在を確認することや、直接抗体の認識しているエピトープの検索も検討している。上記にかかる金額は100~150万円を予定している。 また、上記にて得られた知見は国際学会で報告することも検討している。
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