研究課題
肺癌組織の中でPAI-1を産生する細胞を同定するため、ヒト肺癌組織のパラフィン切片をPAI-1抗体で免疫染色し、PAI-1発現細胞の同定を行った。その結果、PAI-1は肺癌組織間質内のマクロファージから主に産生されていることが明らかとなった。続いて、PAI-1のCAFの筋線維芽細胞への分化に対する関与の有無を調べるため、肺癌組織内のPAI-1発現量と筋線維芽細胞の割合に相関があるかを検討した。その結果、この両者に相関があることが明らかとなった。さらに、PAI-1がCAFの筋線維芽細胞への分化に直接関わっているかどうかを検討するため、in vitroでの検討を行った。線維芽細胞をTGF-βで刺激すると、線維芽細胞が筋線維芽細胞へ分化するが、ここでPAI-1阻害薬を添加すると、この分化が抑制された。以上より、PAI-1がCAFの筋線維芽細胞への変化に関わっていることが示唆されたと思われる。PAI-1が関わるCAFの筋線維芽細胞への分化が腫瘍進展に寄与するかどうかを検討するため以下の検討を行った。ヒト肺癌組織におけるPAI-1発現量と癌間質の筋線維芽細胞の割合が肺癌進展や予後に関係があるかどうかを調べたところ、PAI-1発現量と筋線維芽細胞の割合は肺癌のT因子と病期、予後に関係することが示された。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた5つの実験の内、3つが計画通りに進んでいるため。
引き続き計画通りに進める予定であるが、今後は特にCAFの筋線維芽細胞への分化にPAI-1がどのようなシグナル伝達経路を介して関わっているか、さらにはここまで証明したことが動物実験でも再現できるかどうかを明らかにして行きたい。
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