研究課題
まず、肺癌組織内のPAI-1発現細胞を同定するために40例の肺腺癌手術検体の免疫組織染色をおこなった。この免疫染色により、PAI-1は主に腫瘍間質のリンパ球より産生され、この発現量は癌間質内の癌関連線維芽細胞の割合と相関することが明らかとなった (r=0.71、p < 0.001)。このことから肺癌組織内のPAI-1発現は癌間質の筋線維芽細胞の割合と関係することが示唆された。また、このPAI-1発現量は腫瘍のT因子1/2よりT3/4またstage1よりstage2/3の症例で高発現していることが示された。このことからPAI-1は肺癌組織内の筋線維芽細胞の割合と相関し、腫瘍進展に関わっていることが示唆された。in vitroの実験において、TGF-β刺激をしたヒト線維芽細胞株MRC-5と肺癌手術検体から得られた癌関連線維芽細胞のα-SMA発現がPAI-1阻害剤により抑制された。このことにより、PAI-1は線維芽細胞の癌関連線維芽細胞への分化とその形質維持に関わることが示された。癌関連線維芽細胞とヒト癌細胞株のA549細胞を共培養し、シスプラチンに加えてPAI-1阻害剤を添加したところ、シスプラチンによるA549の増殖抑制効果が増強した。以上から、PAI-1阻害によるCAFへの分化と形質維持の抑制によりシスプラチンの抗腫瘍効果が増強することが示唆された。癌関連線維芽細胞の形質維持にPAI-1がどのように関わるか検討するために、現在リン酸化アレーを行っているところである。
2: おおむね順調に進展している
5つの実験計画の内、3つが終了している。また、本年度は肺癌手術検体から抽出した癌関連線芽細胞を実験に用いることで、本研究の目的を達成するための重要な実験データが得られた。
癌関連線維芽細胞の形質維持にPAI-1がどのように関わるか検討するために、現在行ってるリン酸化アレー解析を終了する。in vivoで、PAI-1阻害により癌関連線維芽細胞の形質維持と増殖を抑制すると、抗がん剤の抗腫瘍効果が増強することが示されるかどうかを検討する。
予定より使用試薬が少なかったため
次年度の繰越金で研究試薬を購入する予定
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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