研究課題
背景; 肺癌は抗癌剤への耐性化を呈する頻度が多いことから、他の癌腫に比べて治療成績は未だ不良である。この肺癌の抗癌剤に対する耐性化に寄与する因子として、Cancer-associated fibroblast : CAFが注目されている。CAFは様々な分子機構を介して腫瘍細胞の浸潤や増殖能を促進しており、その中でも筋線維芽胞;Myofibroblast(MF)へ分化したものは腫瘍進展をより強く促進することが報告されている。Plasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1) は線溶系の抑制因子だが、肺線維症において、線維芽細胞のMFへの分化に関わり、肺線維症の進展に関与することが明らかにされつつある。以上より我々は、PAI-1がCAFのMF形質維持にも関与し、CAFを有する肺癌の化学療法耐性に関与しているのではないかとの仮説を立てた。目的;PAI-1抑制によるCAFのMF形質の抑制の結果、肺癌に対する化学療法の耐性が克服されるかどうかを検討する。結果;①ヒト肺癌組織の免疫染色による癌間質内のPAI-1発現量はCAFのα-SMA発現量、つまりはMF-CAFの割合と相関していた。②In vitroにおいて、PAI-1抑制剤をCAFの培養液に添加すると、CAFのα-SMA発現が低下し、Caspase活性やssDNA発現量が増加した。この結果から、PAI-1はCAFのMF形質維持にアポトーシスを介して関与することが示された。③A549細胞をCAFと共培養すると、CAFと共培養しない場合よりもCisplatinの効果が減弱した。しかし、PAI-1阻害によりMF形質を抑制したCAFと共培養した場合は、Cisplatinの効果が増強することが示された。結論;PAI-1は腫瘍内にCAFを有し、化学療法に耐性を示す肺癌に対する治療標的となり得る。
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