研究実績の概要 |
肺癌は死亡者数が本邦で年7万人を超え最も死亡者多い癌である。近年、FGFを含む各種増殖因子が肺癌を含む癌の生物学に深く関与していることが報告されているが、我々はこれまで肺の発生に関わるFGF9(線維芽細胞増殖因子9)の高発現が、非小細胞肺癌において予後不良因子であることを報告した。さらに行った追加検討で非小細胞肺癌のみならず、小細胞肺癌においても約6割の症例においてFGF9が高発現しており治療標的となりうる可能性があることを見出した。別役らはFGF9が肺癌の発生に深く関わり、トランスジェニックマウスを用いた実験でFGF9を肺上皮細胞選択的に過剰発現させることで肺腺癌を形成することを報告した(Cancer Reseach, 2013)。そこで我々はFGF9を含めたFGFが肺癌細胞及び肺上皮細胞に及ぼす影響を検討した。①FGF9にaddictしている肺癌はあるのか、かつそこに組織学的相違はあるのか?②FGF9が肺癌の細胞増殖に及ぼす影響はあるのか? ③FGF9の受容体、その下流シグナルは何か?④FGFR阻害剤は腫瘍の増殖を抑えるのか?などを解明し、FGFシグナルが肺癌の治療標的になりうるかを考察した。まずは、FGF9過剰発現の肺上皮細胞あるいは肺癌細胞に与える影響を評価するため、FGF9導入後、in vitroではSAGCFA、MTSアッセイで行ったところ非小細胞肺癌(肺腺癌)の細胞株であるA549にレトロウイルスベクターを用いてFGF9を過剰発現させ、過剰発現させていないA549とSAGCFAを施行したところ、FGF9過剰発現細胞株で足場非依存性の増殖能を獲得したことを確認した。FGF9の高発現腫瘍細胞株を網羅的に確認したところ、自験の細胞株、CCLE、EGAのデータで肺小細胞癌のマーカーであるASH1やクロモグラニンAはFGF9の発現と正の相関があることを見出した。
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