研究課題
従来の殺細胞性の非小細胞肺癌の抗癌剤の奏効率30%と乏しいのは癌細胞のみならず癌間質を含めた肺癌組織全体の癌進展制御及び薬剤感受性の多様性があるためと考えられる。癌間質量や癌間質内の線維芽細胞の増殖能の高さが予後と強く相関し、癌間質線維芽細胞の存在様式と癌悪性度の密接な関連性が報告され癌間質の制御の重要性が指摘され始めている。癌間質の主な構成成分である線維芽細胞は、癌関連肺線維芽細胞 (CAF: Cancer-associated fibroblast)と称され、癌治療の新たな標的として注目を集めているが肺癌におけるCAFの解明は不十分である。本研究の目的は、肺癌組織中のCAFの生物学的特性を解明し、CAFを標的とした肺癌治療法を新しい領域からアプローチすることを本研究の主目的とする。本年度までの研究成果として非癌部の正常肺線維芽細胞と比較して、CAFの肺線維芽細胞の生理機能活性を特にCAFの(1)遊走能、(2)コラーゲンゲル収縮能、(3)増殖能に着目しin Vitroによる生理機能解析を行った。研究協力施設の理化学研究所においてControlとCAFの両群のCAGEによる転写活性解析を行った。我々は中でもCAGEの結果からColl11a1が特異的に発現していることに着目し新たなCAFマーカーとして肺癌組織免疫染色でも発現が亢進している事を確認した。またColl11a1を介する相互因子がCAFの遊走能の亢進に関与しており癌細胞との共培養系でもそれらの発現が亢進させることを確認して論文を現在作成中である。
2: おおむね順調に進展している
癌の浸潤を亢進させている活性化したCAFの特異的マーカーの同定および現象及びメカニズムの解明から候補となり得るCAF標的治療薬の検討までをin vitro in vivoの両実験系を用い以下の3期に分けて解明している。1)非小細胞肺癌の手術症例より、手術肺検体から得られる癌組織よりex vivoでの肺線維芽細胞分離培養を行い非癌部の正常肺線維芽細胞をコントロールとしてCAFの生理機能の比較検討を行う2)第4期科学技術計画(ライフイノベーション)に記述されている方針に基づき研究協力施設の提携同意が得られた理化学研究所においてCAGE解析を行い、CAFの転写活性の網羅的解析の結果からCAFで高発現する特異的なマーカーを同定しCAFの生理活性機能との関連検討を行う。3)28年度以降はin vitro でのCAFの生理活性機能に直接関与するCAF特異的なマーカーの機能をマウスへの癌細胞との混合移植モデルを用いた研究で検証しCAF新規標的治療薬としての可能性を検証する。以上をH27-29年度の3年間の研究期間内で解明を行う。現時点では2)までのin vitroの系が結果が順調に得られ同内容でまず先に論文投稿をH29年度内でおこなう。しかし、3)に関して現在論文に追加するために着手に向け準備中である。
CAFの転写活性の網羅的解析の結果から、我々はCollagen11a1の高発現に着目した。Collagen11a1がCAFへの活性にどう影響を及ぼしているか検討を行っている。CAFの活性化している生理機能のなかでも特に遊走能とCollagen11a1の関与について検討を行っている。我々は更にCollagen11a1とECMのインテグリン受容体のITGA11に関しても関連性を検証しており、ともに肺がん患者の癌間質に高発現していることを確認しCAFの活性化との関連をKnockdownにより確認した。In vitro Ex vivoの結果を中心にH29年度中に論文投稿する。
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