喘息発症に重要な遺伝子IL33を制御するmicroRNA(miRNA)を同定するため、気道上皮細胞におけるmiRNAの発現について検討を行った。また、IL33の可溶性受容体であるsST2の発現を抑制し、間接的にIL33応答を制御していることが、腱の細胞において報告されているmiR-29について、上皮細胞においてもsST2を制御しているか否かについて検討を行った。 その結果、上皮細胞においてIL33を直接制御する新たなmiRNAを同定することはできなかったが、miR-29がサイトカイン刺激により上昇するsST2の発現を抑制することが明らかとなった。気道上皮細胞をサイトカインIL4+TNFαで刺激すると、sST2の発現が上昇する。この時miR-29の特異的InhibitorによりmiR-29の発現を抑制したところ、sST2発現はさらに上昇した。また、miR-29を過剰発現することによってsST2の発現上昇は抑制された。このことから、miR-29がサイトカイン刺激により誘導されたsST2を抑制する働きがあることが示された。 一方、受容体タンパクST2の発現は抑制しておらず、miR-29の発現上昇はIL33のシグナルを増強する働きがあると推測された。さらに、miR-29は上皮細胞においてIFNAR1の発現も抑制した。このことから、ウイルス感染においてmiR-29がウイルスの増殖を助ける働きも持つことが示唆され、miRNAがウイルス感染とアレルギー疾患との関係を解明する手がかりとなる可能性も示された。 以上のことから、本研究において、上皮細胞のmiRNAがsST2の発現制御を介してIL33のシグナルを制御し、喘息発症に関与すること、またウイルス感染に関わる遺伝子IFNAR1にも影響を及ぼし、喘息発症に関与している可能性が示された。
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