申請者は、新鮮単離近位尿細管(PT)および遺伝子発現調節した培養単離PTを用いて、申請者らが開発したsplit open法により、野生型マウス、ラット、およびヒトのPT管腔側Na依存性酸塩基輸送能を推定した。 まず、Ang2のヒトPT管腔側の、Na-H交換輸送体(NHE)全活性に対しては、ヒト近位尿細管特異的な濃度依存性の一相性刺激作用を確認した。 次に、NHE阻害剤であるEIPA 0.1mMの添加によるPT管腔側Na依存性酸塩基輸送能活性を測定したところ、マウス、ラットでは30%程度の抑制効果を認めたが、ヒトではほとんど抑制効果を認めなかった。次に、マウスPTによる遺伝子発現調節実験を行った。NHE3またはNHE8に対する特異的siRNAを導入した遺伝子発現調節単離PTでは、残存する管腔側Na依存性酸塩基輸送能活性は、EIPAと同程度の抑制効果であった。このことから、PT管腔側には、EIPA感受性以外の他のコンポーネントの存在が示唆された。 そのため、重炭酸/陰イオン輸送体阻害剤であるDIDS 0.5mMの添加によるPT管腔側Na依存性酸塩基輸送能を測定したところ、マウス、ラット,ヒトの管腔側反応は50%程度の抑制効果を認めた。さらい、EIPAとDIDSの同時添加によるPT管腔側Na依存性酸塩基輸送能を測定したところ、管腔側Na依存性酸塩基輸送能活性は、マウス、ラット、ヒトにおいて大部分が抑制されていた。 以上より、PT管腔側にはEIPAに加えてDIDS感受性のコンポーネントが存在する可能性を見出し、さらにその比率には種差がある可能性を明らかにした。
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