研究課題
我々は概日リズム異常に基づく高血圧として夜間高血圧の発症機序の解明を目的とした。加齢に伴う夜間高血圧の発症機序として、腎臓における11β-HSD2活性の低下が報告されている。加齢に伴い腎臓の11β-HSD2活性が低下すると腎臓で糖質コルチコイドの分解が抑制され鉱質コルチコイド受容体MRの活性化ひいては塩分貯留から高血圧発症に至ると考えられている。しかしHsd11b2遺伝子全身欠損マウスの高血圧は腎臓よりもむしろ神経・血管における11β-HSD2活性低下が交感神経活性化や血管収縮を介して高血圧の原因であるとする報告がなされていた。ところが脳特異的Hsd11b2遺伝子欠損マウスは高血圧の発症に高食塩食を要するなど非生理的な検証であり、11β-HSD2活性の低下による高血圧発症機序は未解明であったので我々は腎臓特異的HSD11B2遺伝子欠損マウス(腎臓KOマウス)を作成した。この腎臓KOマウスはたしかに減塩により改善する食塩感受性高血圧を来たし、腎臓における塩分再吸収機序としてENaC・NCCの活性化を見出した。そしてENaC活性化によるカリウムの代償的な排泄過剰が低カリウム血症を介してNCCの活性化をきたすこと、高カリウム食やENaC阻害薬によって血中カリウム濃度を補正することで高血圧が改善することから、低カリウム血症が高血圧の発症機序として重要な役割を果たすことを見出した。腎臓特異的KOマウスの夜間高血圧・低カリウム血症はすべて通常食塩食で発症することから、脳よりも腎臓の11β-HSD2活性低下は病態機序としてより本質的であることが示唆された。興味深いことに、MR拮抗薬は活動期・非活動期の双方で降圧効果を示したが、別の分子を標的とした阻害薬Xは非活動期でのみ降圧効果を示した。これは夜間高血圧に特異的な発症機序の存在を示しており、今後はその詳細を解析する予定である。
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Hypertension
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