肥満は増加傾向に有り、高血圧や心血管病及び慢性腎臓病発症と密接に関連している。肥満が高血圧を来しやすい原因として、血圧に対する食塩感受性が亢進していることが臨床試験で示されているがその機序は不明である。また、肥満者では、白色脂肪細胞から放出されるアディポカインの合成、分泌の異常が認められており、例えば2型糖尿病や肥満者の血漿では、レプチンが上昇し、腎保護的に働くアディポネクチンは低下している。申請者らは肥満者では、炎症やインスリン抵抗性を惹起、増強するアディポサイトカインが増加していることに注目し、肥満に特有のアディポカイン異常が腎尿細管におけるNa+輸送体の異常を惹起して食塩感受性高血圧発症の原因になると推察し、解析を行った。まず、食塩感受性高血圧モデルラットの肥満型と非肥満型を比較において、同量の食塩を負荷しても、肥満型で高血圧及び腎障害を生じやすいこと、すなわち血圧の食塩感受性が亢進していることを発見した。また、肥満型では高食塩摂取時に腎尿細管のNa+輸送体異常が生じていることを認めた。さらに、肥満において、高食塩摂取時に腎尿細管の責任Na+輸送体を活性化しうる血中アディポカインの異常が存在するかににつき、検討をすすめた。また、様々なモデルラットやマウスを用いて、食塩感受性高血圧に関連する血中のアディポカインを含めたホルモンや分子を検討する過程において、抗加齢因子klothoが食塩感受性高血圧と強い関連を示すことが分かった。腎および血液中のklotho発現が低下したマウスに高食塩食を与えると高血圧を示すが、その原因として血管平滑筋でRhoの異常活性化が生じていることが分かった。現在更にその分子機序につき検討を行っている。肥満や加齢において血圧の食塩感受性が亢進する分子機序は未解明であり、本研究による解明を目標としている。
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