本研究は、Kruppel-like zinc finger transcription factor (KLF5) が腹膜線維化の進展に関与し、KLF5の転写活性阻害剤であるAm80投与により、腹膜線維化を抑制し得ることを証明することが目的である。マウスの腹腔内にchlorhexidine gluconate(CG)を投与することにより腹膜線維症を惹起し、Am80経口投与群と非投与群の形態を比較することで、その腹膜線維化抑制効果を検討した。内容は以下の通りである。①モデルの作成:ICRマウスに0.05% chlorhexidine gluconateを0.01ml/g、3週間隔日腹腔内投与(合計9回)した後(22日目)、屠殺し、腹膜組織を採取保存した。②薬剤の投与:Am80 (1mg/kg)を0.5%メチルセルロースに溶解し連日経口投与を行った。Am80非投与群には0.5%メチルセルロースのみを連日傾向投与を行い対照群とした。③腹膜組織におけるKLF5の発現の検討:免疫染色法により腹膜組織切片上でKLF5の発現を検討した。④Am80による腹膜線維化改善効果の検討:Am80の投与により腹膜線維化が軽減されるかを検討するため、Am80投与群と非投与群間で腹膜組織像を比較した。組織免疫染色を行い、Am80投与によるKLF5の発現抑制を確認した。形態学的な変化はHematoxylin & Eosin染色で観察した。腹膜肥厚の程度に関しては、Masson trichrome染色、免疫染色法を用いてIII型コラーゲンやコラーゲン発現に関連したheat shock protein 47の発現を調べた。免疫染色法を用いてTGF-βの発現やα-SMA陽性細胞の検討を行った。⑤Am80による腹膜機能改善効果の検討:Am80投与により腹膜線維症に伴う腹膜機能低下の抑制がみられるかどうかを検討した。CG投与開始後、3週目に腹膜機能検査を行った。16Gサーフロ針外筒を腹腔内に留置し、腹膜透析液を8ml注入し、1時間後にサーフロ針より回収し、回収液量とグルコース濃度を測定し評価した。正常マウスにも腹膜機能検査を行い比較対照した。
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