本研究は、transforming growth factor β、platelet derived factor Aなどの転写を直接的に制御するKruppel-like zinc finger transcription factor (KLF5)が腹膜線維化の進展に関与し、KLF5の転写活性阻害剤である新規に合成された合成レチノイドAm80投与により腹膜線維化を抑制し得ることを証明することが目的である。昨年度は、マウスの腹腔内にchlorhexidine gluconateを投与することによる腹膜線維化モデルマウスの作成、Am80の投与、モデルマウスの腹膜組織でのKLF5の発現の検討、Am80による腹膜線維化改善効果と腹膜機能改善効果の検討を行った。今年度は、昨年度に行った形態学的な変化の評価のためのHematoxylin & Eosin染色、腹膜肥厚の程度の評価のためのMasson trichrome染色、III型コラーゲンやコラーゲン発現に関連したheat shock protein 47、transforming growth factor βの発現やα-smooth muscle actin 陽性細胞の評価のための免疫染色の結果を、コンピュータ画像解析ソフトを用いて解析した。また、面積あたりの各種染色陽性細胞数をカウントし評価した。Am80経口投与群と非投与群の上記結果を比較することで腹膜線維化抑制効果を検討した。
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