研究課題
慢性炎症は、ストレスを受けた細胞から分泌あるいは放出される分子が内因性リガンドとして働き病原体センサーを刺激することで起こる持続性の炎症であり、生活習慣病などの多岐にわたる病態で重要であることが明らかになりつつある。近年、AKIは長期的に観察するとCKD進展のリスク因子となると認識されてきており、その機序の一つとしてAKI後の修復不全によるリモデリング異常が重要と考えられる。肥満において内因性リガンドが腎症進展に重要な役割を果たす可能性が報告されているが、肥満がAKI修復過程に与える影響についてはまだ十分明らかにされておらず、本研究ではTLR4シグナルあるいはその内因性リガンドの果たす役割を検討することで、AKIからの腎組織修復機序の解明さらには新規治療法の開発に繋げることを目的とする。平成28年度は、臓器および時期特異的なMRP8 KOマウスおよびTLR4 KOマウスを用いて、AKIからCKDへの移行過程のphaseごとの慢性炎症が腎障害に対して果たす役割を明らかにしin vitroの系を用いてMRP8が腎組織局所の慢性炎症に与える機序を詳細に検討することを目標に掲げた。B6マウス腎に虚血再灌流障害(IRI)を45分間施し4週間後に腎臓を観察すると、IRIを行った側の腎重量は障害を与えていない対側腎と比較して約25%と著明に委縮する。データ解析のためのサンプル必要量を確保するために、虚血時間を25分へ短縮し3週間後の観察とすることによって約60%と適度な萎縮が得られた。現在これらのサンプルを用いてAKIからCKDへ移行する過程における慢性炎症の関わりについて検証中である。また、マウス糸球体上皮細胞を用いてツニカマイシン刺激による小胞体ストレスマーカー上昇の系を確立しており、現在MRP8の関わりについて検討中である。またMRP8 KOマウスを交配中である。
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http://www.kumadai-nephrology.com/