研究課題/領域番号 |
15K19463
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
内藤 正吉 北里大学, 医学部, 助教 (40365101)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ネフローゼ症候群 / ネフリン / ボーマン嚢壁前駆細胞 |
研究実績の概要 |
国民の健康に大きな問題となっている慢性腎不全は、糸球体足細胞(ポドサイト)数の減少に起因する。しかし、最終分化細胞であるポドサイトは増殖能を持たないため、ポドサイト数の減少をいかに防ぐかが重要となる。最近、ボーマン嚢壁細胞(parietal epithelial cells: PECs)が前駆細胞として働き、ポドサイトを補充する報告が相次ぎ、糸球体障害の進行を抑える新たな治療戦略として注目を集めている。しかし、イムノトキシン誘導性トラスンスジェニック(NEP25)マウスでポドサイトを傷害した際は、PECs 前駆細胞が存在せず、ポドサイト障害がPECs前駆細胞を誘導するのか、またその詳細な機序は何か、未だ不明である 。 本申請研究では、遺伝子免疫法により作成した抗ネフリン抗体を用いたネフリン障害型FSGSモデルを用いた解析を行う。このモデルの特徴は、代表的なポドサイト障害モデルであるアドリアマイシン腎症を発症しないC57Bl/6系統マウスでFSGSを発症することである。このことは、様々な遺伝子改変マウスを用いたPECs前駆細胞の誘導機序の解明ができることを意味する。 今年度は、主にFSGSモデルの作成に用いる抗体作成および、抗ネフリン抗体の特性を研究した。現在、作成した抗体をC57Bl/6系統マウスに投与中である。 また、本申請研究で用いる抗ネフリン抗体が、ポドサイトのみを認識しPECsを認識しないことを証明するために、シャンクランド研究室からポドサイト細胞株およびPECs細胞株を入手した。現在までに、作成した抗体がポドサイトに発現するネフリンを認識することを確認している。 また、今年度に施行した予備研究の結果では、ネフリン障害FSGSモデルでは、PECsおよびPECs前駆細胞(NCAM陽性)の増加およびPECsの間葉系細胞への移行が認められることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネフリン障害性FSGSモデル作成に必要な抗ネフリン抗体の作製は終了し、2016年4月現在、C57Bl/6系統マウスを用いたネフリン障害性FSGSモデルを作成中である。 また、事前検討の研究においても。ネフリン障害性FSGSモデルにおいて、以下の項目を確認している。1)ポドサイト数(WT1およびシナプトポジン陽性細胞)が減少、2)PECs(PAX2陽性細胞)およびPECs前駆細胞(NCAM陽性細胞)が増加、3)PECsの細胞増殖(Ki67陽性細胞)が増加。4)PECsの間葉系細胞への移行が増加。 さらに、抗ネフリン抗体がポドサイトに発現するネフリンを認識し、PECsを認識しないことを証明するために、留学先であったShankland研究室からポドサイト細胞株およびPECs細胞株を取り寄せた。現在までに細胞染色およびウェウタンブロッティング法により、抗ネフリン抗体がポドサイトに発現しているネフリンを認識することを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、C57Bl/6マウス系統を用いて、ネフリン障害FSGSモデルマウスを作成中である。今後、day7, 14, 28の蛋白尿、血清生化学検査および腎組織を採取し、ネフローゼ症候群発症の確認および、PECs前駆細胞発現の有無を評価予定である。 また、抗ネフリン抗体がPECsを障害しないことを、PECs細胞株を用いて確認予定である。 さらに、PECs前駆細胞に炎症が及ぼす影響を評価するため、ネフリン障害FSGSモデルにおけるSmad3染色やTGF-βで傷害したPECs細胞株モデルによる評価を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に発注した物品・動物の納品が終了していないため。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続きネフリン障害によるPECs前駆細胞の解析に必要な抗体、試薬の購入に用いる。また、取り寄せたポドサイトおよびPECs細胞株の培養に必要な物品の購入にも用いる。
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