研究課題
これまで我々は、心血管リスクをもたらすMR活性化の一機序として、MRの糖鎖修飾(O-GlcNAc修飾)の関与をin vitro解析および糖尿病モデルマウスを用いたin vivo解析で示してきた。前年度は、O-GlcNAc修飾によるMR活性化の生体における意義解明を目的として、O-GlcNAc転移酵素(OGT)の腎糸球体上皮特異的トランスジェニックマウスおよび腎尿細管特異的トランスジェニックマウスを作成し、その表現型解析を行った。その結果、腎尿細管特異的トランスジェニックマウスにおいて、MR標的遺伝子Sgk1の上昇およびMR作用過剰の指標である尿中K排泄亢進を認めた。しかし、長期にわたる観察では血圧上昇や尿アルブミン増加などの心血管リスクに関わる表現型は認めなかった。そこで本年度は、腎尿細管特異的OGT欠損マウスを作成し、MRのO-GlcNAc修飾の生体における意義を検討した。OGT-floxマウスとKsp1-Creマウスを交配し、腎尿細管特異的OGT欠損マウス(腎OGT-KOマウス)を作出した。本マウスではコントロールマウスに比べ、著明な多尿とそれに伴うCr上昇を認めた。腎OGT-KOマウスの腎臓は組織学的に多房性に嚢胞を形成し、腎障害との関連が疑われた。現在、嚢胞形成および多尿・腎障害の分子機序について検討を行っている。我々が確認してきたO-GlcNAc修飾によるMR活性化の結果から考えると、本マウスにおいては腎保護効果が予想されたが、実際の表現型は逆であった。Ksp1-Creは、MRの主たる発現部位である遠位尿細管のみならず、近位尿細管にも発現するという報告もあり、本表現型は、近位尿細管におけるOGT欠損が、MR以外の蛋白を介していることが推察され、より遠位尿細管に選択的にCreを発現させるAQP-Cre等の使用も考慮する必要があると考えられた。
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