本研究は、ポドサイト特異的なAtg7欠損(KO)マウス、カテプシンKOマウスを使うことで、蛋白分解系関連蛋白の機能解明と、最終的には糸球体硬化進展メカニズムの解明を目的としている。 本年度は、最終年度としてカテプシン関連、オートファジー関連研究のまとめを中心に、ポドサイト障害と糸球体硬化への各関連蛋白の機能解明を目指したが、今回実験腎炎におけるポドサイト障害時のカテプシンLおよびそのインヒビターの関与について報告することができた。 ラットネフローゼモデルとして知られるピューロマイシン腎症において、蛋白尿出現初期より多くのポドサイトにカテプシンLの発現亢進が確認でき、また糸球体硬化出現時期には、カテプシンLを含むシステインプロテアーゼのインヒビターであるシスタチンCの発現が、ポドサイト内の特に障害が強いことが予想される部位(カテプシンLの発現が低下している部位)で上昇していることを確認した。これはカテプシンLがポドサイト剥離から糸球体硬化に進展する機序に関与する可能性があると考えられた。 また、アクチン関連蛋白であるsynaptopodin(synp)がポドサイトに特異的に発現し、その発現低下が糸球体硬化を来すことは知られているが、今回マウス糸球体硬化症モデルとして知られるアドリアマイシン腎症において、ポドサイトの細胞骨格である中間系フィラメントの関連蛋白として、Neurofilament heavy polypeptide (NEFH)がポドサイト障害時に発現亢進することを確認した。さらにはNEFHがsynpとポドサイト内で共局在し、ポドサイト障害時のsynpの発現低下を防ぐこと、それによりポドサイトの剥離を抑制することに関与している可能性を報告した。 これにより、最終目標としての蛋白分解系関連蛋白の機能解明と、糸球体硬化進展メカニズムの解明に近づくことができたと考える。
|