IgA腎症は扁桃粘膜免疫の関与が示唆されているが、その機序は不明である。これまで臨床および基礎研究により、扁桃TLR9の発現が腎炎惹起性IgA産生への関与が示唆されている。糖鎖異常IgA1および糖鎖異常IgA1特異的抗体、これらによる免疫複合体形成が病因に関わることが報告されているが、それらの産生部位は明らかになっていない。本研究では、扁桃における糖鎖異常IgA1・糖鎖異常IgA1特異的抗体産生と血清バイオマーカーおよび臨床所見との相関、扁桃TLR9の発現とTLR9遺伝子の塩基多型との相関を明らかにすることで、扁桃摘出術の新たな適応基準を確立することを目的とした。 扁桃における腎炎惹起性IgA産生の検証を行うため、2012年度より扁桃摘出術を行った患者の扁桃細胞を培養した上清の各種バイオマーカーの測定を開始した。IgA腎症患者60症例、非IgA腎症患者34症例について、ELISA法により扁桃上清のIgA、IgG、IgG-IgA免疫複合体、糖鎖異常IgA1、糖鎖異常IgA1特異的抗体の測定を行った。IgA腎症患者においては扁摘前と治療後の血清バイオマーカー(IgA、IgG-IgA免疫複合体、糖鎖異常IgA1、糖鎖異常IgA1特異的抗体)の測定を行った。また、当院診療録から、治療開始時から継時的な臨床検査所見(血清クレアチニン値、尿蛋白定性、尿蛋白量、尿潜血反応、尿沈渣など)、治療内容(ステロイドパルスの回数、ステロイド内服量および期間、抗血小板薬、抗凝固薬、ACE-I/ARB内服の有無など)についてのデータ収集を行い、バイオマーカーの推移との関連を検討した。 腎炎惹起性IgA産生に対する扁桃Toll like receptor9(TLR9)の関与を検討し、扁桃TLR9とTLR9遺伝子の塩基多型による扁摘適応基準の検証を行うため、IgA腎症患者扁桃組織のRNA抽出を行い、各種バイオマーカーと扁桃TLR9の発現、TLR9遺伝子の塩基多型との相関を検証する。
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