研究課題/領域番号 |
15K19477
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
三橋 弘明 東海大学, 工学部, 講師 (20466220)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 筋ジストロフィー / FSHD / DUX4 |
研究実績の概要 |
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)は最も患者数の多い型の筋ジストロフィーの1つである。近年、FSHD患者筋でDUX4遺伝子が高頻度に発現していることが明らかとなり、原因遺伝子として注目されている。DUX4は選択的スプライシングにより2種類の転写因子タンパク質、DUX4-flとDUX4-sを産生するが、DUX4-flのみが細胞毒性を持ち、DUX4-sは毒性を持たない。本研究ではDUX4-flが細胞毒性を持つ仕組みをタンパク質レベルで明らかにすることを目指し、17種類のDUX4変異体タンパク質を作製した。それらをヒト培養細胞であるHeLa細胞に発現させたところ、DUX4-flのC末端のごく短い領域が細胞毒性に必須であることが明らかとなった。さらに、DUX4変異体をモデル動物であるゼブラフィッシュ胚に発現させたところ、ヒト培養細胞と同様の結果を得た。また、DUX4変異体の転写活性をqPCRで測定した結果、毒性のない変異体は転写活性も低いことが明らかとなった。したがって、DUX4-flは転写活性依存的に細胞毒性を発揮することが示唆された。これらの結果は、DUX4の転写活性の抑制が将来の治療法開発研究の標的となる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた11種類のDUX4変異体に加え、さらに6種類のDUX4変異体を作製することができた。細胞毒性を評価する系としてヒト培養細胞の系ではいくつかの細胞株の検討の結果、HeLa細胞が最も適していると判断した。HeLa細胞を用いた系で検討した結果、DUX4-flのC末端のごく一部の領域を欠失させるだけでDUX4-flの毒性が顕著に減少することが明らかとなった。また、毒性のないDUX4-sに転写活性を増加させるドメインを融合させることによって、細胞毒性が増加することも明らかとなった。qPCRを用いた解析により、細胞毒性と転写活性が相関していることが明らかとなった。また、一部の変異体についてはゼブラフィッシュを用いても細胞毒性の検討が進んでおり、ヒト培養細胞と同様の結果を得ていることから、DUX4-fl C末端の重要性がin vivoでも確かめられた。来年度の実験計画で用いるトランスジェニックゼブラフィッシュの繁殖をおこない、十分な個体数を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は予定通り、トランスジェニックゼブラフィッシュを用いてDUX4の各変異体が脊椎動物の発生に与える影響を検討していく。ライブイメージングによる筋発生の追跡をおこない、異常を示す時期を特定して電子顕微鏡などを用いた組織学的な解析をおこなう。また、in vivoにおいてDUX4-flが転写活性化する遺伝子群をRNA-seqなどの手法を用いて包括的に解析し、細胞毒性を引き起こす分子経路の同定に挑む。また、ヒト培養細胞を用いたDUX4-flの細胞毒性評価系を構築することができたため、これをさらに応用してDUX4-flの毒性を抑制する手段についても検討をおこなっていきたい。
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