顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の原因遺伝子としてDUX4遺伝子が注目されている。DUX4はスプライシングにより2種類の転写因子タンパク質、DUX4-flとDUX4-sを産生するが、DUX4-flのみが細胞毒性を持つ。本研究では17種類のDUX4変異体を作製し、DUX4のドメイン構造と機能の関係を検討した。その結果、DUX4の転写活性が細胞毒性と強く相関することを明らかにした。さらに、共同研究により、DUX4の転写活性と細胞内ユビキチン化タンパク質量が相関することも明らかとなった。DUX4-flの毒性を阻害する手段として、DUX4変異体による競合阻害を試みたところ、DNA結合能を保持し、転写活性を持たない変異体が細胞毒性の阻害を示すことが明らかとなった。本研究結果は国際誌に論文発表した。 また、変異体を用いた研究から、DUX4のC末端部位が転写活性化ドメインとして機能することを明らかにした。そこからDUX4のC末端部位の遺伝子多型がFSHD症状に影響を与える可能性があると考えた。DUX4遺伝子は非常に長いタンデムリピート(D4Z4リピート)を形成しているため、従来のシークエンス技術では配列の解読ができない。そこで新型のロングリードシークエンサーを用い、共同研究によりD4Z4リピートを13個含むBACクローンの解読に成功し、論文発表した。 また、DUX4が発生に与える影響を調べるため、DUX4-fl mRNAと、DUX4と類縁のDNA結合ドメインを持つpax3のmRNAをゼブラフィッシュにインジェクションし、発生過程を観察した。その結果、DUX4-flでは体幹部に主な発生異常が起きたのに対し、pax3では頭部に発生異常が起きた。このことからpax3とDUX4-flのDNA結合ドメインは似ているが、その標的は異なることが示唆された。
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