研究課題
脳虚血後,外因性ミクログリア移植による組織修復促進機序の解明を目標とした.まず,虚血に類似した低酸素低糖刺激(OGD)をミクログリア細胞に施したのち,培養液中の血管内皮増殖因子(VEGF),脳由来神経栄養因子(BDNF),各種サイトカインのELISAを行った.さらに,マトリックスメタロプテナーゼ-9(MMP-9)のFRETアッセイを行った.この刺激で,保護的ミクログリアが分泌するVEGFやTGF-βは増加し,炎症性サイトカインIL-6は低下し,保護的ミクログリア(M2ミクログリア)主体であることを示した.さらに,組織リモデリング因子のMMP-9分泌も増加していた.すなわち,OGD刺激を行うことで,ミクログリアを保護的な状態に誘導する条件を明らかにできた.さらに,このM2ミクログリアを動脈投与することで,脳梗塞28日後に,脳実質のVEGF,TGF-β,MMP-9発現が対照群と比べて亢進していることを示した.MMP-9は神経軸索伸展を阻害するコンドロイチンヘパラン硫酸(CSPG)を分解する.M2ミクログリア投与群では,脳実質のCSPG発現は低下していた.その結果,血管新生,神経軸索伸展を誘導することを明らかにし,ミクログリア移植による組織修復促進機序を明らかにした.
2: おおむね順調に進展している
実験遂行は順調に行われ,特許出願,学会発表,論文作成が行われた.
予定通り進行しており,継続の方針
競争的外部獲得資金を得たため,そちらから研究費を捻出した.そのため,残った科研費は来年度に繰り越した.
H29年度の計画でも,ELISAや一次抗体を多く使用する.繰り越した予算を用いて,十分な検討を進めたい.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 産業財産権 (1件)
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 42582
10.1038/srep42582
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
巻: 24 ページ: 240-253
10.5551/jat.RV16006