研究課題
アルツハイマー病(AD)の主要病理はアミロイド沈着とタウ病変であるが、タウ病変と他のAD病態との関連は不明である。ADのタウ病変を、新たに開発された[11C]PBB3-PETで評価し、活性化ミクログリアを可視化する[11C]DPA-PETにて評価した脳内炎症と[11C]PIB-PETで評価したアミロイド沈着、各種認知機能との関連を検討した。対象は、NINCDS/ADRDAのAD診断基準に合致する孤発性AD患者20人(平均年齢69.4±8.3歳、男性7名、女性13名)。AD初期では、タウ病変は側頭葉主体に認めたが、進行とともに前頭頭頂葉へと広がっており、 Braakの提唱する進展様式と一致した。 [11C]PBB3-PETで、早期ADのタウ病変を把握できていると考えられる。全般的認知機能を評価するMMSEの低下と、側頭葉から前頭葉にかけてのタウ病変の広がりとに相関関係をしめしたことは、タウ病変の広がりが認知機能の低下に直接かかわっていることを示していると考えられた。外側側頭葉のタウ病変が上昇と、前頭葉から側頭葉にかけてのアミロイド病変の広がりとに相関関係を示したことは、アミロイド仮説を支持する結果と考えられた。[11C]DPA-PETによる検討では、側頭、後頭、前頭葉を中心に活性化ミクログリアの進展を示し、これらの結果は過去の報告に合致するとともに、ADでは、早期から脳内炎症が広範に広がっていることが示唆された。また、脳内炎症の進展様式は、タウ病変の広がりと重なり合う傾向にあり、右海馬にて、タウ病変と脳内炎症は直接の相関を示した。以上から、活性化ミクログリアの進展には、タウ病変が直接関与しているものと考えられた。その関連が一部でしか示されなかったことは、活性化ミクログリアの進展が、早期のADにおいても、すでに広範に広がっており、一部はプラトーに達している事が要因と考えられる。
すべて 2016
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