研究課題
研究代表者らは、前頭側頭葉変性症患者の死後剖検脳を用いた大脳病変のマッピング,およびこれに基づく病態特異的診断バイオマーカーの提唱、および前頭側頭葉変性症における中枢神経病変,特に尾状核・被殻病変の細胞病理学的な病態解明をテーマに研究を行った。研究協力先として、愛知医科大学加齢医科学研究所神経病理部門と共同研究を行った。実験に当たっては、前頭側頭葉変性症のもっとも主要なサブタイプであるTDP-43タンパクの異常凝集を伴う症例の剖検脳を用いた。実験の対象症例は、孤発性の49症例である。結果として、TDP-43タンパクの異常凝集を伴う前頭側頭葉変性症においては、正常コントロールやアルツハイマー病に比べて、新線条体、とくに尾状核の障害が高度であることを明らかにした。さらに、尾状核ニューロンの中でもGABA作動性遠心ニューロンの障害が選択的に起こり、アセチルコリン作動性もしくはGABA作動性の介在ニューロンは比較的障害を免れることを証明した。そして、線条体遠心ニューロンの中でも、サブスタンスPを神経伝達物質とし、淡蒼球内節・黒質へ投射するニューロンがより高度に障害されることを明らかにした。我々は、TDP-43異常凝集を伴う筋萎縮性側索硬化症の剖検例でも同様の実験を行ったが、軽度ながら同様の傾向があることを見出した。これらのことから、画像などによる尾状核病変の検出や、線条体遠心系のサブスタンスP活性の可視化などが、いまだバイオマーカーの発見されていないこれらの疾患の診断標的になる可能性が示唆された。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 図書 (1件)
Journal of Neuropathology & Experimental Neurology
巻: 75 ページ: 801-811
10.1093/jnen/nlw053