研究課題
A.研究目的:多系統萎縮症(MSA)では認知機能低下を認めうることが指摘されている。特に我々はMSAで遂行機能を主体とした認知機能低下を認め、前頭葉の血流低下が病態と関係していることを見出している.しかし、MSAでは遂行機能障害以外にも記憶、視空間機能も障害されることがしばしば報告されている.ただしその病態は十分に分かっていない.そこでMSAで認められる認知機能低下について頭部MRIを用いて病態解明(多系統萎縮症で認められる認知機能低下の病態解明)を目的にした。B.研究方法:頭部MRIで多系統萎縮症の30例で認知機能低下のある15例とない15例をそれぞれ年齢と性別で有意な差のない健常コントロ-ル15例でVoxel-based morphometry(VBM)、tract-based spatial statistics(TBSS)、安静時脳機能MRIを行い萎縮部位の確認と脳内神経回路解析を行った。C.研究結果:MSAの認知機能低下群では小脳萎縮は認めるものの大脳萎縮は認めなかった.一方、安静時脳機能MRIでも軽微な異常を認めたものの全般的には良く保たれていた。しかしながら解剖学的神経回路解析であるTBSSでは認知機能正常のMSAでは小脳脚や橋横線維の異常は認めるものの大脳の異常はなかったが、認知機能低下群では小脳脚や橋横線維に加えて前頭葉中心とした広範な異常を認めた。またMSAの認知機能低下には白質線維、特に脳梁が重要であった。D.結論:脳梁がMSAの高次脳機能障害に関連している可能性があり、アルツハイマ-病やレビ-小体型認知症とは異なった病態、つまり多系統萎縮症の高次脳機能障害においては解剖学的神経回路障害、特に脳梁の障害が重要と考えられた。
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