研究課題/領域番号 |
15K19486
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上村 紀仁 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90749045)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / ゴーシェ病 / 自然免疫 / メダカ |
研究実績の概要 |
まず、メダカMyD88とTRIFをクローニングし、コーディングリージョンの塩基配列を決定した。メダカMyD88は288アミノ酸、メダカTRIFは577アミノ酸よりなる蛋白質であった。次にCRISPR/Cas9 systemによる遺伝子破壊を試みた。いずれの遺伝子についても3種類のcrRNAを設計し、一細胞期の受精卵にマイクロインジェクションした。Heteroduplex Mobility Assayにてdouble strand breakを起こす効率を確認したところ、いずれの遺伝子についても良く機能するcrRNAを得ることができた。最終的に、MyD88に関しては4塩基欠失により51番目のアミノ酸からフレームシフト変異を起こす変異体が、TRIFに関しては10塩基欠失により40番目のアミノ酸からフレームシフト変異を起こす変異体が得られた。いずれの遺伝子に関しても、蛋白質の前半部分からフレームシフト変異を起こしており、機能は欠失していることが予想された。いずれの変異体においてもヘテロ接合型変異体同士を交配し、ホモ接合型変異体(MyD88-/-、TRIF-/-)を得た。MyD88-/-、TRIF-/-共に、懸念された易感染性は問題にはならず、いずれも成魚になり得た。また、外観や泳ぎ方からは、明らかな表現型の異常は観察されなかった。そこで、いずれの変異体についてもGBA 変異メダカと交配し、GBA+/-MyD88+/-, GBA+/-TRIF+/-メダカを得た。一方、MyD88変異メダカ、TRIF変異メダカ共に蛋白質レベルで欠失していることを確認するため、メダカMyD88とメダカTRIFに対するウサギポリクローナル抗体を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、CRISPR/Cas9 systemによりMyD88変異メダカ、TRIF変異メダカを作製することができた。MyD88-/-、TRIF-/-メダカ共に懸念された易感染性が問題にならないことを確認し、GBA-/-MyD88-/-, GBA-/-TRIF-/-メダカの作製に着手することが出来ている(これらの親であるGBA+/-MyD88+/-, GBA+/-TRIF+/-メダカを得られている)。現在のところ、計画通りに遂行できており、次年度の実験計画に取り掛かることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、メダカMyD88とメダカTRIFに対するウサギポリクローナル抗体を用い、MyD88-/-、TRIF-/-メダカにおいて蛋白質レベルでの欠損を確認する。また、GBA+/-MyD88+/-, GBA+/-TRIF+/-メダカが生殖可能となれば、それぞれ同士を交配開始し、GBA-/-MyD88-/-, GBA-/-TRIF-/-メダカの作製と解析に着手する。解析としては、生存期間の評価、行動解析(ビデオトラッキングシステムを使用)、炎症抑制効果の評価(魚類ミクログリアのマーカーであるAPOE のin situ hybridization、炎症性サイトカインmRNA 定量測定)、神経細胞死の評価(特定の神経細胞群として、ドパミン、ノルアドレナリン、セロトニン神経細胞群について免疫組織染色を行ってカウントする)、α-Syn 蓄積の評価(免疫組織染色、ウェスタンブロット)、 スフェロイドの評価(透過型電顕、免疫組織染色)等を予定している。GBA-/-メダカと比較してGBA-/-MyD88-/-, GBA-/-TRIF-/-メダカいずれも何らかの表現型の改善を認めた場合、三重変異体GBA-/-MyD88-/-TRIF-/-メダカ作製と解析も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の試薬やメダカ飼育設備を用いて実験が遂行可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験を遂行するための必要な試薬を購入する。また、メダカ飼育設備が老朽化しており、こちらの修繕費用にも充てることを検討する。
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