研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は上位・下位運動ニューロン徴候を神経学的特徴とする疾患群である。本年度は、客観的バイオマーカー確立を目的として、magnetic resonance imaging (MRI)やmagnetic resonance spectroscopy (MRS)などの神経画像を用いてALSを解析した。一次運動野において、N-acetyl aspartate (NAA)とグルタミン酸 (Glu)の比であるNAA/Glu比が罹患期間と相関することを報告した (Sako et al., J Clin Neurosci 2016)。また補足運動野において、神経間の構造的結合性を表すfractional anisotropy (FA)値が罹患期間と重症度両方と相関することも見出した (Sako et al., Neurol Sci 2016)。これらの結果は、NAA/Glu比とFA値が疾患重症度を反映し、治療効果判定や予後予測に有用である可能性を示唆している。さらに、機能画像であるfunctional MRI (fMRI)から局所における神経活動の同調率を反映するregional homogeneity (ReHo)を算出し、ALSにおける一次運動野のReHo値低下を証明した。この結果は本研究のfMRI撮影・処理方法に対する信頼性、そしてALS診断法としてのfMRIの妥当性を支持する結果と考えられる。今後、神経機能・構造をそれぞれ反映するfMRIとFA値を用いて、これらを統合した解析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では以下のような実績が得られ、概ね順調に進んでいると自己評価した。①ALSの一次運動野におけるNAA/Glu比が罹患期間と相関していることを明らかにした。②ALSの補足運動野における構造的結合性が罹患期間と疾患重症度の両方と相関していることを明らかにした。③ALSの一次運動野における神経活動の同調率の低下を明らかにした。
今後は登録症例をさらに増やすとともに、神経機能画像と構造画像を統合的に解析し、ALSにおける機能・構造異常の関係を明らかにする。さらに、それらを組み合わせた新規バイオマーカー開発を行い、receiver operating characteristic curveを用いてその診断能力を評価する予定である。
平成28年3月納品となり、支払いが完了していないため、次年度使用額が生じた。
平成28年4月に支払い完了予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 5件、 査読あり 13件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件)
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