研究課題/領域番号 |
15K19488
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
西辻 和親 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 助教 (40532768)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アミロイドーシス / アミロイド / ヘパラン硫酸 / トランスサイレチン |
研究実績の概要 |
アミロイドーシスとは、前駆体タンパクが凝集して形成するアミロイドと呼ばれる線維状の不溶性物質が様々な臓器に沈着することによって引き起こされる難治性の疾患である。この内、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)は遺伝性アミロイドーシスであり、主に肝で産生される変異型のTTRやアポリポプロテインA-I(apoA-1)などが線維化し組織に沈着することにより発症する疾患である。さらに、TTR型であるI型FAPはapoA-1に関連したFAP(III型FAP)等に比較して日本国内で最も患者数が多く、長野県と熊本県に集積地が存在し、これまでに100を超える変異が報告されている。現在のところ、肝移植によって原因となる異常タンパク質の供給を絶つことはできてもアミロイドの沈着とその結果として生じる臓器傷害を改善させるには至っていない。グリコサミノグリカン(GAG)は種々の細胞が合成する直鎖状の細胞外糖鎖であり、主要な部分はアミノ糖とウロン酸の二糖が数十回繰り返す二糖繰り返し領域によって構成される。GAGは構成単糖の種類や硫酸化パターンなどの違いにより、ヘパラン硫酸(HS)やコンドロイチン硫酸(CS)などに分類される。GAGは様々なアミロイドーシス患者組織においてアミロイドと共沈着することが報告されており、アミロイドーシスの発症や病態に関与することが示唆されている。本研究においてヒトTTRアミロイドーシス患者組織切片の免疫組織化学染色を行った結果、腎臓でTTRアミロイドとヘパラン硫酸が共沈着していることが分かった。また、TTR線維化におけるGAGの役割について検討するため、チオフラビンT及びヘパリン-BSA複合体を用いたin vitroの評価系の構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗ヘパラン硫酸抗体を用いたヒトTTRアミロイドーシス患者組織切片の染色はおおむね順調に進んでおり、複数例においてヘパラン硫酸の沈着が確認できた。また、TTR線維-細胞間相互作用の評価系については、予備実験として容易に入手可能であるアポリポタンパク質A1(apoA-I)を用いて行い、免疫細胞化学及びドットブロットによる評価系の確立に成功した。引き続きこの実験系及び前述のTTR線維化の評価系を用い、今後の研究が予定通り進捗すると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
前年度で構築したチオフラビンT及びヘパリン-BSA複合体を用いたin vitroの評価系を用い、様々なTTRドメインの線維化におけるGAGの役割についてさらに詳細な解析を行う。また、TTR線維-細胞間相互作用においてGAGがどのような役割を果たしているかについて、前年度に構築したapoA-I線維を用いた実験系を用いて解析する。この際、細胞における全ての硫酸基付加反応の阻害剤である塩素酸ナトリウムやGAG伸長阻害剤であるbeta-D-キシロシドを用いてCHO細胞などの細胞表面のGAG構造を改変し、同様の実験を行う。さらにこれらに加え、チャイニーズハムスター卵巣細胞及びそのHS欠損株pgsD-677細胞やHS/CS欠損株pgsA-745細胞を用いる。また、TTR線維の検出が抗体で困難な場合、直接蛍光プローブ等で標識し、実験を行う予定である。TTRアミロイドーシス患者組織切片について、腎臓以外の組織についても免疫組織化学染色を行う。引き続き、免疫細胞化学並びに免疫組織化学に用いるカバーガラスやスライドガラス等の消耗品及び各種抗体、TTRの様々なドメインの合成ペプチド、酵素結合免疫吸着検定法用の高吸着プレート、ドットブロット用のニトロセルロースメンブレン、細胞培養用の培地および血清を購入する。また、上記のTTR線維の標識に用いるタンパク質標識蛍光プローブキットを新たに購入する必要が生じる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入について、出来る限りキャンペーン等を利用して節約に努めたため、当初予定金額より支出が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
合成ペプチドの購入に関し、種類を当初予定より増やす予定である。これにより、さらに研究の進展が期待できる。また、当初の計画にはなかったタンパク質の蛍光標識用プローブキットの購入にも充てる。
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