研究課題
アミロイドーシスは前駆体タンパク質が凝集して形成するアミロイドと呼ばれる線維状の不溶性物質が様々な臓器や組織に沈着することにより引き起こされる難治性の疾患である。このうち、トランスサイレチン(TTR)を前駆体とするATTRアミロイドーシスは日本国内で最も患者数が多く、集積地も存在する。一方で、アミロイドはそのタンパク質成分のみで沈着することはなく、グリコサミノグリカンを含むさまざまな生体分子と共沈着することが知られている。本研究で、ヒトATTRアミロイドーシス患者切片の免疫組織化学染色を行い、腎臓、末梢神経等でグリコサミノグリカンの一種であるヘパラン硫酸とTTRが共沈着していることが分かった。また、心臓ではTTR線維の沈着は観察されたが、ヘパラン硫酸は検出されなかった。次に、ヘパラン硫酸のATTRアミロイドーシス病態発症の役割をin vitroの実験系で解析した。まず、ヘパラン硫酸の多硫酸化アナログであるヘパリンとBSAの複合体でコーティングしたプレートを用い、TTR線維化に対するヘパラン硫酸の影響をチオフラビンアッセイにより解析した。その結果、TTRの線維化はヘパリンの存在下において促進されることが分かった。また、CHO(Chinese Hamster Ovary)細胞とそのヘパラン硫酸欠損株を用いて実験を行った結果、TTR線維の細胞取り込み及び細胞毒性が細胞表面上のヘパラン硫酸に依存すること判明した。従って、ヘパラン硫酸はTTRのアミロイド形成及びTTR線維の毒性を促進、仲介することによりATTRアミロイドーシスの発症に重要な役割を果たしていることが示唆された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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