私たちはアレルギー素因をもつ患者で感覚障害や感覚過敏(アロディニア)が多いことに着目し、末梢のアレルギー炎症が中枢グリア細胞の活性化やアロディニア発症に関与するかを解析している。 H28年度は、アレルギー炎症モデルマウス(アトピー性皮膚炎、気管支喘息モデル)がアロディニアを呈しており、脊髄ではグリア細胞が活性化していたことから中枢グリアの活性化がアロディニアに関与することを見出し、グリア炎症を標的としたアロディニアの治療を試みた。これらのグリア細胞はEDNRBというエンドセリン(ET-1)の受容体分子を高発現しており、末梢血中のET-1レベル上昇や、アレルギー病変(気管支、皮膚)におけるET-1の発現を認めたことから、EDNRBの拮抗的阻害薬であるBQ788を投与し治療を試みた。その結果、アロディニアは著明に改善し、グリア炎症も対照群と同レベルまで沈静化した。このことから、世界中で増加傾向にあると言われているアロディニア患者の少なくとも一部では脊髄グリア炎症を伴っている可能性が高く、これらの患者に対するBQ788による治療は有効である可能性が極めて高いことが世界で初めて判明した。この結果はJournal of Neuroscienceに発表した。
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