研究課題
我々は、マウス及びヒトのES, iPS細胞から大量のミエロイド系免疫細胞を作製する方法を開発し、これをES, iPS-MLと命名している。ES, iPS-MLは単純な浮遊培養系で長期間にわたり増殖する細胞であり、自動培養装置を用いることで大量生産培養が可能である。本研究はこの大量培養が可能なES-MLを利用して、自己免疫疾患モデルマウスの細胞治療について検討を行った。実験的自己免責性脳脊髄炎 (EAE)マウスに対して、臨床症状の発症後 (尾部の麻痺)にES-MLを投与し、臨床症状改善効果について確認したところ、通常のES-MLでは、コントロール群 (無治療群)と比較して臨床症状の改善が殆ど認められず、免疫抑制効果は認められない可能性が示唆された。そこで、強力な免疫抑制作用を有する免疫抑制分子TRAILを遺伝子導入した遺伝子改変ES-ML-TRAILの投与を前述と同様の条件で行った。その結果、ES-ML-TRAIL群投与群では投与回数依存性に、臨床症状の改善効果が確認された。さらにES-ML-TRAIL群では、コントロール群及びES-ML群と比較し、CD11b陽性ミエロイド細胞の割合上昇、CD4陽性T細胞の割合低下が確認され、脊髄浸潤Th1細胞数の減少が認められた。以上の結果から、ES-MLそのものを自己免疫疾患に応用することは困難であることが予想されたものの、遺伝子導入を行うことで対応可能である可能性が示唆された。一方で、ES-, iPS-ML細胞はCD206の発現を有し、免疫抑制性マクロファージとして貪食細胞としての役割を有したことから、アルツハイマー病を代表とするような異常なタンパクが沈着するような疾患に対して有効である可能性が示唆された。
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