研究課題
CADASILは動脈形成に重要な役割を担うNotch3膜蛋白質の点変異による遺伝性脳血管障害である。点変異により細胞外ドメインに不対のシステイン残基が形成され、新たな機能が加わり、病原性を発揮すると考えられているが、その病態生理は明らかにされていない。そこで我々は不対のシステイン残基により、新たな酵素活性を形成するという仮説を立てた。この仮説を検証するため、酵素活性を検出する酵素組織化学染色法を用いて、CADASILに特異的な病理所見であるGranular Osmiophilic Material (GOM)への染色性を検討した。まず、酵素組織化学染色法においては、アミン酸化酵素活性を認めた。しかし、初期条件の酵素活性反応では、シトクロムC酸化酵素活性による非特異的な染色することが判明したため、非特異的な染色性を減じる条件を設定して、改良を加え、より選択性の高い染色条件が得られた。また、免疫組織学的な検討により、GOMへの染色性を検証したところ、GOMの過剰蓄積により血管平滑筋が変性したPAS陽性の顆粒状変性に加えて、GOMの一部に免疫組織学的な染色性を認めた。さらに今回開発した酵素組織化学染色法を活用して、ドラッグリポジショニングを行い、既存薬剤からGOMの酵素活性阻害作用のある薬剤を選択した。現在、CADASILのモデルマウスに既存薬剤を投与して、GOM形成阻害作用の有無について検証している。
2: おおむね順調に進展している
CADASILの特異的な病理所見であるGOMの酵素組織化学染色法の開発および動物モデルへの応用については、概ね順調に進展している。蛋白解析については、今後の検討が必要である。
ドラックリポジショニングにより得られた薬剤の本疾患への有効性について、動物モデルへの投与により検証する。我々が所有しているモデルマウスはNotch3変異をKnock-inしたマウスであり、病原蛋白質を強制発現させることなく、生理的に発現する。生後4~5ヵ月よりCADASILに特異的な病理所見GOMが形成される。GOMの形成前の3ヵ月マウスから投与を開始して、GOMが確実に形成される10ヵ月まで投与して、GOM形成の有無により薬剤の有効性を検証する。蛋白解析においては、これまでのプロテオミクス解析から病原蛋白の可溶化には還元処理が必要で不可欠である事が明らかにされているため、還元処理を加えた前処置条件を設定して、病原蛋白の可溶化条件を設定して、質量解析により、Notcth3 の変異への翻訳後修飾について検証する。
既存の設備と消耗品を使用して、本研究を遂行できたため
本研究課題の1つとして、蛋白解析による病態解析に関しては、新規に行う研究であり、消耗品を含む実験道具の購入が必要であり、その費用に研究費を使用する計画である。
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