研究課題
進行期パーキンソン病ではウェアリングオフやジスキネジアといった運動合併症が問題となる。進行期パーキンソン病におけるニューロモジュレーションとして、視床下核または淡蒼球内節を電気刺激する脳深部刺激療法(DBS)が有効である。しかし、従来の電気刺激では、刺激強度によっては刺激範囲が広がってしまい、目的神経核以外に刺激がおよぶことによる副作用が問題となる。induced pluripotent stem (iPS) 細胞由来の神経細胞移植においても、移植細胞のドパミン放出をコントロールしない限り、ジスキネジアの問題は解決しない。そこで、本研究では、光活性化イオンチャネル蛋白をiPS細胞由来ドパミン神経細胞に発現させた「光反応性ドパミン神経細胞」を移植することによって、移植細胞のドパミン放出を光ファイバー経由で外部から自由にコントロールできるようにした調節可能神経細胞移植療法によるパーキンソン病に対する新規ニューロモジュレーション法の開発を目的とした。初年度は、in vitroでiPS細胞由来ドパミン神経細胞の光刺激によるドパミン放出を測定すると同時に、免疫不全マウスの線条体にiPS細胞由来ドパミン神経細胞を移植を行い、in vivoで光刺激によるドパミン放出を測定した。その結果、iPS細胞由来ドパミン神経の移植に成功し、移植細胞の生着を確認することができた。しかし、これまでのところ、移植したiPS細胞由来の光刺激によるドパミン放出はまだ十分に確認できていない。in vitroにおいても光刺激に対する反応はやはりまだ十分に確認できていない。従って、光反応性蛋白の発現に問題があると考えられ、今後は光反応性蛋白の発現条件を工夫し、光によるドパミン放出制御機構を確立する予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定よりも早く、iPS細胞由来ドパミン神経の移植に成功している。一方で、これまでのところ、in vivo、およびin vitro、いずれにおいても光刺激に対する反応が十分に確認できておらず、光反応性蛋白の発現条件を工夫する必要があり、そのための準備を進めているところである。従って、総合的にはおおむね順調に進展していると判断した。
今後は、上記に述べた、iPS細胞への光反応性蛋白の発現条件を工夫することで光反応性ドパミン神経細胞の確立を行い、1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine (MPTP)による黒質破壊PDモデルマウスおよび6-hydroxydopamine (6-OHDA)による線条体破壊およびlevodopa長期投与によるジスキネジアモデルマウスにおける検討を行い、「光反応性ドパミン神経細胞」移殖療法による生理学的なドパミン放出の立証だけでなく、病態改善効果についても立証していく。
次年度使用額が生じた主な理由として、当初初年度に購入予定であった、レーザー光光源を、以前から所有していたもので代用できたため、購入せずに済んだことがあげられる。
本年度はジスキネジアモデルマウスでの行動実験も予定するため、追加でワイヤレス光刺激装置を中心に購入する予定である。
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