研究課題
孤発性パーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症(DLB)では、通常は無害である野生型αシヌクレイン(αSyn)が毒性および伝播性を獲得(プリオノイド化)し、疾患の発症・進行の原因となると考えられるが、その要因や伝播の分子メカニズムは未解明である。申請者はPD/DLBのリスク遺伝子であるグルコセレブロシダーゼの機能喪失により蓄積した糖脂質グルコシルセラミドがαSynのプリオノイド化を促進し野生型αSyn発現ショウジョウバエの病態を増悪させることを見出した。そこで本研究では他の脂質の影響にも着目し、1)αSynのプリオノイド化に影響する脂質要因を明らかにする。また、プリオノイド化αSyn伝播を解析する新規のショウジョウバエモデルを構築してスクリーニングを行い、2)プリオノイド化αSynの脳内伝播メカニズムを明らかにする。今年度は、αSynプリオノイド化in vitroアッセイとして、様々な脂質を含むリポソームと精製αSynを混合し、αSyn の凝集、proteinase K(PK)耐性への影響を評価した。その結果、αSynの異常構造化に影響を及ぼす可能性のある脂質としてGM1ガングリオシドを含む複数の脂質を同定した。また、ショウジョウバエモデルにおけるプリオノイド化αSynの毒性評価として、野生型αSynを神経系に発現するショウジョウバエと、前述のin vitro実験でαSynプリオノイド化に影響した脂質の一つであるGM1ガングリオシド分解酵素遺伝子のshRNAを発現するRNAiノックダウンショウジョウバエを交配し、次世代のハエの運動機能障害および神経変性への影響を評価した。その結果、GM1ガングリオシド分解酵素遺伝子のノックダウンによりαSyn発現ショウジョウバエの運動機能障害が増悪することが分かった。また、αSyn蛋白質のPK耐性も促進されていることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
αシヌクレインのプリオノイド化に影響する脂質として複数の脂質を同定し、その一つであるGM1ガングリオシドがin vivoモデルにおいてαシヌクレイン毒性を促進することを見出したことから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。一方、研究代表者の所属する研究グループの異動により一時研究が中断したため、αSynの脳内伝播をモニターするモデルショウジョウバエの構築はやや遅れている。
平成28年度は当初の計画通り、1)ショウジョウバエモデルにおけるプリオノイド化αSynの毒性評価として、αSynプリオノイド化関連遺伝子の同定とその影響についての解析を行う。また、2)αSynの脳内伝播をモニターするモデルショウジョウバエの構築を進め、脳内伝播に影響する遺伝子の同定を目指す。
研究代表者が所属する研究グループが異動したため一時研究が滞り、予定した実験の実施が遅れ、大幅な未使用額が生じた。また、前年度までに購入していた試薬等が使用可能であったため、実施した実験に関しても大きな支出が無かった。
新たな所属となり、以前の所属研究室で共通利用していた小型機器などを新たに購入する必要がある。そのため、次年度以降は当初予定していたよりも支出の増額が見込まれ、前年度の未使用額をこれに充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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http://www.ncnp.go.jp/press/press_release150916.html