研究課題/領域番号 |
15K19509
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高山 浩昭 金沢大学, 医学系, 技術職員 (90725227)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヘパトカイン / LECT2 / AMPK / PKA |
研究実績の概要 |
動物飼育スペースの都合上、本年度は平成27年度予定のマウス個体へのメトホルミン投与実験の代わりに平成28年度予定の培養肝細胞実験を前倒しして実施した。特に、本年度はマウス肝臓より単離した初代培養肝細胞へのメトホルミン処置および各種表現型の解析を行った。その結果、マウス初代培養肝細胞へのメトホルミン投与は、Lect2遺伝子発現およびLect2タンパク分泌を濃度依存的に抑制した。この結果は、これまでに得られていた培養肝細胞株での結果がより生理的な条件で再現できたことを示す。 この肝細胞へのメトホルミン処置によるLect2遺伝子発現抑制の機序として、既報を詳細に検討し、AMPK経路およびPKA経路ではないかと想定した。そこでマウス初代培養肝細胞においてAMPKまたはPKAのノックダウンがメトホルミンの作用を解除するかどうか検討を行った。その結果、AMPKα1サブユニットとAMPKα2サブユニットのダブルノックダウンはメトホルミンによるLECT2遺伝子発現抑制に影響を与えないことが明らかになった。しかしながら、今回の実験ではノックダウン効率が40%程度と期待したよりも低かったため、siRNAトランスフェクションの条件を変更して再試行する。PKAノックダウンの影響については現在検討中である。 またヒトLECT2遺伝子上流2.4kbまたは2.4-5kbの領域をルシフェラーゼベクターにクローニングしたLECT2プロモーター活性レポーターベクターを構築した。これらのレポーターベクターをトランスフェクションした培養肝細胞にメトホルミンを処置したところ、レポーター活性に変化はなかった。この結果は、LECT2遺伝子発現におけるメトホルミン応答領域がLECT2遺伝子上流5kb以内には存在しない可能性を示唆する。今後は、プロモーター活性だけでは無くmRNAの安定性にも注目して検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メトホルミンの作用を、より生理的条件に近い初代培養肝細胞によっても再現する結果が得られた。また初代培養肝細胞にsiRNAをトランスフェクションする実験系を確立することができた。初代培養肝細胞を用いたメトホルミン作用の検証はおおむね順調に進展している。 LECT2プロモーターベクターを用いた検討については、メトホルミン処置によるプロモーター活性の変化を検出することができず、それによりメトホルミンの標的転写因子の同定には至らなかった。今後はこの結果が、このベクターを構築する際の不備によるものか、またはメトホルミンによるLECT2遺伝子発現制御がプロモーター活性の変化とは独立しているかどうかを検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行った初代培養肝細胞を用いたin vitro実験を推進する。具体的には、PKA siRNAがメトホルミンの作用を解除しうるかどうか検討する。またsiRNAの他にAMPK、PKAの阻害薬がメトホルミンの作用を解除しうるか検討する。 LECT2発現機構の解析について、メトホルミンがプロモーター活性に与える影響だけでは無く、LECT2 mRNAの安定性に与える影響も検討する。 加えて、本年度に施行できなかった動物実験を行う。具体的には、食事肥満マウス、ob/obマウス、db/dbマウスなどの肥満糖尿病モデルマウスへのメトホルミン投与が血中LECT2濃度に影響を与えうるかどうか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究の遂行に必要な物品を効率的に購入した結果、2,806円の差額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の予算と合算して、研究に必要な消耗品の購入に使用する。
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