末梢動脈疾患患者における糖尿病と予後・治療成績との関連、ならびに糖尿病患者における末梢動脈疾患の病態進展リスクに関して検討をおこなった。前者、すなわち、末梢動脈疾患患者における糖尿病と予後・治療成績との関連に関しては、末梢動脈疾患患者のデータベースを活用し、血行再建術施行患者における総死亡・下肢大切断と背景因子との関連について分析をおこなった。少数例で検討した我々の過去の報告と同様、糖尿病は下肢大切断と関連するものの、総死亡とは有意な関連を見いだせなかった。また重症虚血肢患者において糖尿病は膝下動脈病変の存在ならびに病変の石灰化と関連し、糖尿病合併患者では血管内治療後の主要下肢事故リスクが高かった。さらに糖尿病を合併した重症下肢虚血患者において、血行再建術後の下肢の状態(下肢大切断の有無、創傷治癒の遷延)は生活の質の低下に関連していた。また糖尿病の合併の有無が、選択した血行再建方法と治療成績との関連に影響を及ぼす可能性が示された。さらにわが国の重症虚血肢患者では、糖尿病は腎機能障害と並び合併頻度が高いことが明らかとなった。 後者、すなわち、糖尿病患者における末梢動脈疾患患者の病態進展リスクに関しては、まず糖尿病足病変のリスク因子として重要である神経障害との関連に着目し検討を進めた。既存のデータベースを用いた解析の結果、神経障害と末梢動脈疾患の直接的な関連は見いだせず、糖尿病患者においては、末梢神経障害の進展状況にかかわらず、末梢動脈疾患の進展リスクに留意する必要があることが示唆された。さらに、末梢動脈疾患の診断においては、足関節上腕血圧比が境界域であることを加味することにより、その診断予測精度が向上することが示唆された。また糖尿病患者において、終末糖化産物と末梢動脈疾患との関連についても検討をおこなったが、両者の間に明らかな関連は見いだせなかった。
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