研究課題
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)における進行形の病態として考えられているが、発症機構の解明や予防・治療法の確立はなされていない。昨今NAFLDの危険因子として加齢などに伴うテストステロン低下が注目されている。研究代表者らはこれまでに、テストステロン低下による脂肪肝発症機構を明らかにしたが、NASH発症機構の解明には至っていない。本研究は、ヒトNASH病態に近似したテストステロン低下NASHモデルマウスを新たに開発し、男性におけるテストステロン低下によるNASH発症機構を解明すること、およびNASHの予防・治療法確立の礎とすることを目的とした。本研究は、研究代表者らの既報と本研究の予備実験を応用し、ヒトNASH病態に近似したテストステロン低下NASHモデルマウスを作製した。精巣摘出マウスに炎症を惹起させ、高脂肪食を投与することにより、テストステロン低下、内臓脂肪増加、インスリン抵抗性、血清炎症マーカー上昇の表現型を呈し、肝臓において炎症性細胞浸潤・線維化および炎症に関与する遺伝子発現の増加を認めた。これらの障害はテストステロン補充により改善を認めた。さらにNASHモデルマウスは体重増加が抑制されており、インスリン抵抗性、慢性炎症、筋力減少などが互いに影響し合い悪循環を引き起こし、いわゆるサルコペニアの病態を形成している可能性が示唆された。本研究は、ヒトNASH病態に近似した新規NASHモデルマウスを開発し検証するため、得られた研究成果から実臨床への展開が現実的であり、NASHの新規薬物治療戦略確立へ貢献できると考える。
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Arch Biochem Biophys
巻: - ページ: -
10.1016/j.abb.2017.03.007
Endocrine
巻: 51 ページ: 174-184
10.1007/s12020-015-0666-y