我々の先行研究において、QTL解析により同定した新規糖尿病感受性遺伝子Ildr2は、小胞体に局在する膜タンパク質をコードしており、Ildr2の発現低下が脂肪肝発症に関与することを示した。 近年、小胞体ストレスが、肥満(脂肪肝)や糖尿病など、メタボリックシンドロームの病態と深く関与していることが注目されている。ILDR2は、小胞体局在膜タンパク質であることから、小胞体ストレスによってその機能が制御される可能性が考えられた。そこで、本研究では、Ildr2の発現低下と脂肪肝の関連を明らかにすること目的として、Ildr2の発現調節機構の解明を試みた。 まず、小胞体ストレスがIldr2発現に影響を与えるかどうかを検討するために、小胞体ストレス誘導剤、ツニカマイシンを肝細胞株処理し、その発現量をreal-time PCRにより検討した。Ildr2の発現量は、ツニカマイシン濃度依存的に有意に低下した。次に、Ildr2のプロモーター領域には小胞体ストレス応答配列(ERSE)に類似する配列が存在していることから、ERSEに結合する転写因子がIldr2の転写を制御している可能性が考えられた。そこで、Ildr2プロモーターを用いたレポーターアッセイを行った結果、小胞体ストレストランスデューサーであるATF6a、XBP1がIldr2の転写を抑制することが明らかとなった。 Ildr2発現は、小胞体ストレスにより抑制されることから、ILDR2が小胞体ストレスと脂肪肝発症とを関連付ける新たな仲介因子であることが示された。
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