研究課題/領域番号 |
15K19526
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
原 朱美 順天堂大学, 医学部, 博士研究員 (60570009)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵ラ氏島 / PPY細胞 / β細胞 / 糖尿病 / 細胞系譜 |
研究実績の概要 |
ノックインマウスを用いたPPY細胞の細胞系譜の追跡により、PPY-β細胞間の分化転換制御機構を解明し、PPY細胞が新たなβ細胞の起源となる可能性を証明することである。 本研究課題遂行に用いる抗PPY抗体の特異性を確認するため、Ppy遺伝子欠損マウス(Ppycre/cre)の膵組織切片の免疫組織化学を行った。市販の抗PPY抗体陽性細胞が複数認められ、抗PPY抗体の特異性に乏しいことが判明した。そこで、新たに抗PPY抗体を作製した。Ppycre/creにPPY抗原を免疫し、最終的に免疫組織化学法およびウェスタンブロット法に適したモノクローナル抗PPY抗体 (mPP 32-1A8)を作製した。Ppycre/creの膵組織切片を用いて、mPP-321A8の免疫組織化学を行った。結果、野生型マウスの膵島では複数のmPP-321A8陽性細胞が認められたが、Ppycre/creでは全く認められなかった。したがって、mPP 32-1A8は、PPYタンパクを正確に検出できることが判明した。mPP-321A8は特許申請中 (特願2015-246912)である。現在mPP 32-1A8の特異性に関する論文を作成中であり、以後の検討にはmPP 32-1A8を用いることとした。 本研究課題の目的遂行のため、Ppy promoter- driven NLS- Creノックインマウス (Ppycre/+)とRosa26 promoter- driven eGFPマウス (Rosa26- eGFP)から両遺伝子をもつPpy- eGFPを作出した。8から18週齢までのPpy-eGFPマウスにおける、抗GFP、PPY抗体陽性細胞の分布の免疫組織化学的解析を行った。加齢に伴い膵島内の抗GFP抗体陽性抗PPY抗体陰性細胞が増加した。現在、加齢に伴うPPY細胞からβ細胞への分化転換過程を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は、研究結果について研究室内で定期的なdiscussionを行いながら遂行した。
本研究課題の遂行にあたり、特異性が高い抗PPY抗体が必要である。申請者は、本研究課題遂行に伴い、Ppycre/creの膵組織切片を用いて市販の抗PPY抗体の特異性を検証した。その結果、Ppycre/creにおいてもその陽性細胞が認められ、市販の抗PPY抗体の特異性に乏しいことが判明した。本研究課題の遂行に適した特異性の高いモノクローナル抗PPY抗体を新たに作製したため、本研究課題の目的である「PPY細胞の細胞系譜の追跡」に関する検討の開始が遅れた。 平成27年度、Ppycre/creの膵組織で陽性細胞が認められない、特異性の高いモノクローナル抗PPY抗体を作製したことにより、今後の検討におけるPPYタンパクの検出は、最も正確であるが明確である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の検討により、8から18週齢までのPpy-eGFPマウスにおいて、加齢に伴い膵島内の抗GFP抗体陽性抗PPY抗体陰性細胞が増加することが確認できた。平成28年度以降は、これまでの所見を元に、特にPPY 細胞とβ細胞の分化転換の可能性に焦点を絞り、以下の検討を行う。 実験計画1. PPY細胞はどのような細胞系譜をとるのか? 発生期から成体までPpy遺伝子発現細胞の細胞系譜を膵臓の領域別に解析する。さらにβ細胞は、自己複製により数が維持されると考えられている (J Clin Invest 123 (3), 990-995, 2013)。長期的な解析により、PPY 細胞由来のβ細胞数の減少が認められない場合、加齢に関わらずPPY 遺伝子発現細胞のβ細胞への分化能が保持され、β細胞の起源 (source)となるPPY 細胞が、成体でも持続的に供給されることを証明する。 実験計画2. PPY細胞からβ細胞への分化転換の引き金は? インスリン抵抗性・糖毒性条件において、β細胞ではPdx1 発現量が低下し、PPY 細胞へと分化転換する。申請者は、同様のメカニズムがPPY 細胞からβ細胞への分化転換を制御する場合、PPY 遺伝子発現細胞をβ細胞のsource として機能させることが可能であると考えた。本研究課題では、PPY細胞でPdx1 を過剰発現させ、PPY 細胞からβ細胞への分化転換を制御することができるのか?、その可能性を明らかにする。
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