本研究は、FGF23関連低リン血症性疾患における責任遺伝子の同定や、腫瘍性骨軟化症の原因腫瘍における体細胞変異の同定による、FGF23産生調節機構の解明を目的としている。研究期間内に、FGF23関連低リン血症性くる病患者の遺伝子解析と、腫瘍性骨軟化症の原因腫瘍のエクソーム解析、MLPA解析、RNAシークエンスを行った。その結果、 1)8家系9例のFGF23関連低リン血症性くる病患者において、PHEX遺伝子のナンセンス変異5例、ミスセンス変異3例、一塩基欠損1例を認めた。日本人の先天性FGF23関連低リン血症性くる病患者において、家族歴の有無によらずPHEX遺伝子変異によるX染色体優性低リン血症性くる病(XLHR)の頻度が高いことやPHEX mRNAを用いた解析の簡便性・有用性を確認した。 2) PHEX遺伝子を含む既存の責任遺伝子に変異を認めないFGF23関連低リン血症性くる病患者1例、およびその両親に対してエクソーム解析を施行したが、責任遺伝子の同定には至らなかった。 3) 腫瘍性骨軟化症患者4例を対象に、原因腫瘍のエクソーム解析とMLPA解析を施行したが、病態に関連する単一遺伝子変異の同定には至らなかった。 4)腫瘍性骨軟化症患者1例を対象に、原因腫瘍および正常組織を用いてRNAシークエンスを施行した。現在、RNAシークエンスにおいて発現増加がみられた遺伝子群を対象に、腫瘍発症におけるそれらの遺伝子の作用や転写調節について検討を進めている。
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