グレリンには3番目のセリン残基にオクタン酸修飾を受けている活性型グレリンと、受けていないデスアシルグレリンが存在するが、グレリン受容体と結合し、生理活性を示すのは活性型グレリンのみである。グレリンの活性化に必要なオクタン酸修飾は、グレリンアシル化酵素(GOAT)の働きによって仲介されることが報告されているが、アシル化の基質となるオクタン酸の由来については明らかになっていなかった。 本研究は、独自に樹立したグレリン産生細胞株、MGN3-1細胞株を用い、基質供給経路を明らかにするため、脂肪酸を用いて研究を進めてきた。脂肪酸は、LPSの受容体であるTLR4受容体の内在性リガンドと報告されていることから、今年度は炎症反応とグレリン分泌調節の関連に着目し、研究を実施した。グレリン産生細胞への脂肪酸刺激による、炎症関連遺伝子であるTNF-a遺伝子、IL-6遺伝子の発現量増加を認めた。LPS、IL-1、IL-6、TNF-aでグレリン産生細胞を刺激したところ、IL-1刺激でグレリン及びGOAT遺伝子発現量の低下を認めた。また、グレリン産生細胞では、IL-1によってNF-kappaBシグナル経路が活性化され、グレリン分泌が抑制されることを見出した。さらに、胃初代培養系においても、IL-1はグレリン遺伝子発現量を減少させた。 IL-1は、炎症反応時におけるグレリン産生の調節因子であり、NF-kappaBシグナル経路の活性化が主要な役割を果たしていることが示唆された。
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