研究課題/領域番号 |
15K19535
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
嶋村 美加 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 研究機関研究員 (90736406)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / 甲状腺癌 |
研究実績の概要 |
(1)ALDH酵素活性阻害作用がある2つの薬剤Diethylaminobenzaldehyde (DEAB)とDisulfiram (DS)を用いてスフィアアッセイを行ったところ、DSのみでスフィアの形成抑制がみられ、DEABでは見られないことがわかった。そのため、shRNAを用いてALDHをノックダウンし、そのときスフィア形成の変化を検討することにした。19種類あるヒトのALDHアイソザイムのうちどのアイソザイムが甲状腺癌細胞株で高く発現しているのかを検討した結果、ALDH活性が比較的高い細胞株では1A3の発現が高い事がわかった。60%以上がALDH陽性細胞であるFRO細胞を用いてレンチウイルスによりALDH1A3をノックダウンした細胞を作製後、スフィアアッセイを行った。その結果、スフィア形成に全く影響を与えないことがわかった。また、同時に全くALDH酵素活性をもたないTPC1細胞にALDH1A3を発現させ、スフィアアッセイを行ったところ、スフィア形成能を獲得できず、ALDH活性はスフィア形成能に影響を与えない事がわかった。このことからALDHは単なる癌幹細胞のマーカーであり、機能的な役割は果たしていない可能性が考えられた。 (2)前回の論文においてFRO細胞を用いて自己複製能や多分化能を検討した。方法として、Aldefluor assayを行いALDH酵素活性の陽性/陰性分画で細胞をソーティング後接着培養し、1週間ごとにALDH陽性率の変化を測定した。その結果、どちらの分画の細胞でも2週間で元の細胞集団の割合に戻り、可塑性がある事を報告した。我々の研究室には他に3種類の腫瘍形成細胞があり、その細胞でも同様の実験を行った。結果、細胞によって元に戻る時間は異なるもののどの細胞株においても2-4週間で元のALDH陽性率に戻り、可塑性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)28年度まで予定した分まで前倒しでおこなっているため順調に進んでいるといえる。(2)可塑性の分子メカニズム解明はALDHの機能の重要性を確認したのちに行うのが妥当と考え、(1)の実験を前倒しでおこなったため、少し遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)今年度の実験結果よりin vitroスフェア形成能は確認できたので、来年度はin vivo腫瘍形成能で同じ現象が起きるのかを確認する。ALDHは直接スフィア形成能に影響を与えなかったが、DSがスフィア形成をなんらかの作用で抑制していることはわかった。DSはALDH酵素活性阻害以外に様々な作用が知られている。DSのスフィア抑制がどのような経路で抑制されているのかを今後検討していく予定である。具体的方法として、DS処理細胞前後で遺伝子発現の量的差異を見るためマイクロアレイ解析を、活性化の質的差異を見るためにBio-Plex Proを用いてリン酸化タンパクの網羅的解析を行っていく予定である。 また、他のグループの報告においてヘッジホッグシグナルがALDH活性や、スフィア形成に関わっているという報告があるので甲状腺癌においても同様なことがあるのかをヘッジホッグシグナル阻害剤サイクロパミンを用いて、Aldeflor assayやスフィアアッセイを検討する予定である。 (2)4種類の腫瘍形成細胞株すべてで可塑性が確認できた。その他に予定していた可塑性の可視化や脱メチル化剤や酸化ストレスなどによるepigeneticな影響検討に関しても順次実験を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画に対して進歩に多少遅れが生じており、計画では使用予定であった試薬等の購入が一部出されていなかったために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究計画で実行できなかった項目で使用を予定している消耗品の購入に使用する。
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