研究課題
AT1受容体結合蛋白(ATRAP)は、『AT1受容体の病的過剰活性化に拮抗する内在性抑制分子』として機能することにより、認知症を抑制できる可能性がある。本研究では、ATRAP の発現調節機構異常と認知症との関連について多面的に検討し、ATRAPの認知症における病態生理学的意義の解明、およびATRAPに着目した新規分子標的治療法の検討を行った。認知症モデル動物におけるAT1受容体、ATRAPの発現調節を検討した。高血圧合併認知症モデルである自然発症高血圧ラット(SHR)および対照ラット(WKY)をもちいて、6週齢および12週齢における脳組織AT1受容体およびATRAPの発現分布をレーザーマイクロダイセクション法により検討した。また、SDラットを認知症促進刺激であるAngII投与群およびvehicle群にわけて飼育し、2週間後に脳組織におけるAT1受容体およびATRAPの発現分布をレーザーマイクロダイセクション法により比較検討した。その結果、SHRはWKYに比べて、脳弓下器官(SFO)および室傍核(PVN)における酸化ストレスの増大、AT1受容体発現の亢進、ATRAP/AT1受容体発現比の低下を認めた。さらに、SDラットにAngIIを投与すると、SFO、PVN、頭側延髄腹外側野(RVLM)における酸化ストレスの増大、ATRAP/AT1受容体発現比の低下を認めた。以上より、中枢神経において、ATRAP/AT1R受容体発現比の低下が酸化ストレスの増大をもたらし、認知症の発症・進展に関わる可能性が示唆された。
3: やや遅れている
脳組織における免疫染色がスムーズにいかず、大幅に時間を要した。脳弓下器官、視床下部室傍核、前視床下野、延髄吻側腹外側野などにターゲットをしぼり、レーザーマイクロダイセクション法による発現解析を推し進める方針とした。
レンチウイルスATRAP高発現ベクターを作製し、認知症モデル動物に投与することで、中枢におけるATRAP高発現が認知機能に与える影響を検討する。
すべて 2015
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lipids in health and disease
巻: 14 ページ: 161
10.1186/s12944-015-0164-5