研究課題
我が国では現在450万人以上の認知症患者が存在し,高齢化の進展とともに10年後には倍増することが予測され,高齢者のQOLのみならず,介護という観点からも社会的に重要な課題である.近年,糖尿病や高血圧などの生活習慣病を有する人は認知機能の低下を招きやすいことが明らかにされている.したがって,心血管系疾患の発症・進展に関わるレニン-アンジオテンシン系(R-A系)は認知機能障害にも深く関与していると考えられるが,その機序は不明な点が多い.ATRAPは1型アンジオテンシン受容体(AT1受容体)の過剰活性化を抑制する内在性分子である.本研究では,高血圧性認知症モデル動物をもちいて,中枢におけるAT1受容体,ATRAPの病態生理学的意義を検討した.高血圧合併認知症モデルである自然発症高血圧ラット(SHR)および対照ラット(WKY)をもちいて,6週齢および12週齢における脳組織AT1受容体およびATRAPの発現分布を比較検討した.また,WKYをアンジオテンシンII(AngII)投与群およびvehicle群にわけて飼育し,2週間後に脳組織におけるAT1受容体およびATRAPの発現分布を比較検討した.収縮期血圧は,12週齢においてSHRはWKYと比較して有意に高値を示した.SHRではWKYと比較して,6週齢,12週齢いずれの時点でも脳弓下器官(SFO)および視床下部室防核(PVN)における酸化ストレスが亢進し,さらに,SFOおよびPVNにおけるATRAP/AT1R発現比が低下していた.さらに,WKYへの慢性持続AngII刺激は,血圧上昇および認知機能の低下とともに,SFOおよびPVNにおける酸化ストレスの上昇,ATRAP/AT1R発現比の低下をもたらした.以上より,中枢におけるATRAP/AT1R発現比の低下が高血圧性認知機能障害に関与する可能性が示唆された.
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