研究実績の概要 |
神経内分泌腫瘍(NET)は肺や内分泌器官、消化管などに生じる。我々はPHLDA3が細胞膜脂質に結合することによってAkt機能を抑制し、肺と膵臓のNETにおいてがん抑制遺伝子として機能することを明らかにした。これらのNETではPHLDA3が高頻度なヘテロ接合性の消失(LOH)を呈し、PHLDA3のLOHをもつ膵NETは予後不良であることがわかっている(Cell, 2009、PNAS, 2014)。また我々はPHLDA3欠損マウスにおいて、内分泌器官の異常を観察している。 本研究ではPHLDA3遺伝子異常の解析を行い、種々のNETの発症機構の解明を目指した(結果1、2)。また、PHLDA3遺伝子が細胞の増殖、アポトーシスを抑制することから、膵島移植への応用を考え、実験を行った(結果3)。 (結果) 1. 培養細胞におけるPHLDA3タンパク質の機能解析を行った。その結果、PHLDA3結合分子を見出し、Akt活性、細胞増殖への影響を確認した。今後は、研究期間に収集したPHLDA3欠損マウスの異常が認められた内分泌器官において、見出した分子の機能的関与を調べる。 2. PHLDA1に類似の構造を持つPHLDA1遺伝子の解析を行った。PHLDA1のAkt活性、細胞増殖への影響、ドメイン構造の解析、細胞膜脂質に対する結合性について調べた。結果は論文にまとめ、投稿中である。 3. PHLDA3遺伝子の欠損は、膵島細胞をアポトーシス耐性にする(PNAS, 2014)。このことから、PHLDA3遺伝子の欠損が膵島移植に役立つのではないかと考えて実験を行った。膵島細胞を死滅させた糖尿病モデルマウスにPHLDA3欠損膵島を移植したところ、膵島が効率よく定着し、機能した(PLOS ONE, 2017)。
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