研究課題/領域番号 |
15K19540
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
鵜生川 久美 秋田大学, 医学部, 助教 (70646554)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒト赤芽球 / 脱核 / ダイニン / EHNA(阻害剤) / 微小管形成中心(MTOC) / 細胞極性 |
研究実績の概要 |
1. プラス端集積因子であるNuMAと4.1Gの蛋白質レベルの発現は、後期赤芽球前駆細胞(CFU-E)から脱核に分化する過程で減少したことから、脱核への間直接的な関与はないと考えられるが、脱核直前のダイニンの微小管形成中心(MTOC)の集積との関連については詳細な解析が必要である。 2. 自己免疫疾患改善薬であるヒドロキシクロロキン(HCQ)が脱核阻害した。HCQは4.1Rと結合することが報告されており(BBRC 2016;473:999)、また、4.1Gは4.1Rのアミノ酸配列の相同性が高いのでHCQにより4.1Gの膜蛋白質との結合が阻害された可能性がある。HCQによる4.1Gの細胞内局在の解析から因果関係を明らかにする。 3. アクチン重合分子であるmDia2は、CFU-Eおよび赤芽球のMTOC付近に集積していた。マウス赤芽球では、mDia2は脱核時の収縮環形成に関与し、その上流因子はRacGTPaseであることが報告された(Nat Cell Biol 2008;10:314)。mDia2のアクチン線維との結合はCdc42によって制御される(Cytoskelton 2012; 69:919)。申請者はCdc42に着目し、CFU-Eから成熟赤芽球に至る最終分化段階まで発現していることを定量PCRと免疫ブロット法にて確認した。また、Cdc42 GTPase inhibitorであるCASINがCFU-Eの増殖を抑制すること、赤芽球の脱核を抑制することを明らかにした。Cdc42赤芽球脱核との関与はこれまで知られておらず、新たな知見である。 4. 赤芽球の遺伝子導入は細胞の性質上困難であったが、蛋白質の発現制御による解析は極めて有効手段であることから、遺伝子導入試薬による条件設定と、レンチウイルスベクターを用いた遺伝子導入の条件設定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. NuMAや4.1Gといった微小管プラス端集積因子が、赤芽球の分化・成熟に伴って、脱核への関与が少ないと考えられたが、初年度で明らかにしたダイニンの集積が起こる脱核直前での細胞内分布及びHCQのよる脱核阻害との因果関係の解析を開始した。 2. mDia2及びCdc42について検討を開始したが、その準備のために計画全体が遅れた。 3. 遺伝子導入について検討を進めているが、primaryの増殖・分化をする赤芽球の性質上、条件設定に時間を要している。現在、レンチルウイルスを用いたGFPの導入をモデルにして検討を進めており、細胞の生存率向上が喫緊の課題である。また、siRNA導入試薬の検討を並行して検討しているために遅れている。 4. 申請者が妊娠し、医師からの自宅安静指示と、引き続いての出産のため、11月より研究が中断したことも研究が遅れている大きな理由の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
1. 4.1Gについては、HCQの添加によるCFU-Eの増殖率と脱核率と4.1Gの発現および細胞内局在との関係を解析する。 2. Cdc42をCASINで阻害した時の細胞内局在を共焦点顕微鏡で解析する。また、Cdc42の阻害に伴った微小管形成中心および細胞骨格蛋白質(チュブリンとアクチン線維、mDia2)との関係を解析する。また、微小管形成に異常が認められた時には、ダイニンのMTOCへの集積について解析する。 3. 脱核の際にダイニンが運搬する分子について検討する。抗ダイニン抗体による免疫沈降で得られた蛋白質は、SDS-PAGEで分離後にLC MS/MS(質量分析計)で解析・同定する。 4. 遺伝子導入による過剰発現(変異体も含む)によるCFU-Eの増殖性、細胞形態、脱核率について解析する。対象はCdc42とダイニンとする。また、遺伝子導入によるノックダウンがうまく行かない場合は、特異抗体の直接導入を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者が妊娠し、医師からの自宅安静指示をうけたこと、引き続いての出産のため、計画が中断した。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の推進方策に基づいて、実験を進める。予算は、抗体、siRNA合成、ベクター構築等に使用する。
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