前年度までに、アクチン重合分子であるmDia2が、CFU-Eおよび赤芽球のMTOC付近に集積しているとの知見を得ていたが、申請者の確認不足にて、それはmDia3(Dia2、DIAPH2)に対する抗体であったことが判明した。つまり、ヒトのCFU-Eおよび赤芽球においては、mDia3がMTOC付近に集積していた。改めてmDia2(DIAPH3)の局在を確認したところ、mDia2はCFU-Eの細胞間期には核内に存在し、分裂期に細胞質に点状に分布していた。 mDia2とアクチン繊維との結合を制御するCdc42が、赤芽球脱核時まで発現しており、その阻害剤(CASIN)が赤芽球脱核を抑制することが明らかとなったため、さらに検討した。CASIN投与時のメイ・ギムザ染色とcell cycleを解析した。CFU-Eでは細胞形態に明らかな変化はなく、CASIN投与でG2/M期の細胞が減少していた。赤芽球では、細胞形態・細胞周期ともに有意な変化を認めなかった。 赤芽球の遺伝子導入技術確立のため、3種類の遺伝子導入方法を検討した。まず、遺伝子導入試薬を用い、CFU-Eに対し2種類のsiRNAとnegative control siRNAを導入したが、タンパクレベルの有意な変化は認めなかった。次に、レンチウイルスベクター用いて導入したところ、コントロールとして使用したK562細胞にはGFPが発現したが、primary赤芽球には発現しなかった。さらに、エレクトロポローション法を試みた。GFPプラスミドベクターでは、細胞の生存率7割前後、導入効率3割程度が得られた。 以上、微小管プラス端因子を手掛かりに検討を進めた結果、mDia2、mDia3とCdc42が、赤芽球脱核時に収縮環形成位置決定に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、赤芽球への遺伝子導入による機能解析に可能性を開いた。
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